段ボールシート製造用ノーキャリヤー(NC)型澱粉接着剤における加熱糊化時の熱量的挙動と接着剤の調製に及ぼす添加苛性ソーダの影響
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概要
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高澱粉濃度領域で濃度を変えて使用される段ボールシート製造用NC型澱粉接着剤において,加熱糊化時と接着剤調製時の添加苛性ソーダ比率の影響を,従来多く使用されてきた対接着剤苛性ソーダ重量濃度や対使用水重量濃度に換えて,対澱粉当たりの重量比率,さらには同モル比率(グルコース残基当たりの苛性ソーダモル数)を用いて検討した。澱粉懸濁液と接着剤とを対比して調べた糊化開始温度(T_s)は,苛性ソーダ添加モル比率の増加により共に温度低下し,懸濁液では特異的に著しく低下した。糊化の進行と完了を示す糊化ピーク温度(T_p)と糊化完了温度(T_c)は,懸濁液と接着剤とで相異はなく,糊化時の苛性ソーダ添加モル比率の増加に従って同様に温度低下した。粒径分布比較と懸濁液T_sの特異な温度低下から,接着剤では苛性ソーダに鋭敏に反応する一部の澱粉の糊化膨潤は調製時に既に先行しており,NC接着剤の調製では増粘にこの一部の澱粉を利用していると考えられた。NC型接着剤中の溶解澱粉比率と澱粉の膨潤度合との両方に,調製時苛性ソーダ添加モル比率と直線的な比例関係があった。2つの近似直線を苛性ソーダ無添加懸濁液のそれぞれの値に外挿して,接着剤調製時の溶出と膨潤開始の閾値として8.3mol%と8.9mol%の苛性ソーダ添加モル比率を得た。懸濁液と接着剤の糊化エンタルピー(ΔH)は,接着剤には調製時苛性ソーダ添加モル比率を用いると,同一2次曲線によく近似して9mol%前後から急減した。接着剤ΔHの減少割合と,溶解澱粉比率と膨潤度合の増加割合との比較から,接着剤ΔHの顕著な減少は,調製増粘時の高い苛性ソーダ添加モル比率により,一部澱粉の糊化膨潤だけではなく,残りの澱粉内結晶構造も減少したためと推定された。しかし,接着剤のT_pとT_cの温度低下は懸濁液と変わらず,結合力の高い大部分の結晶構造は維持されていると考えられた。
- 日本応用糖質科学会の論文
- 2011-07-20
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