窒素溶液による石灰質土壌および石灰岩からのCO_2放出
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概要
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窒素溶液の滴下による炭酸塩の溶解促進と,その過程におけるCO_2放出を明らかにすることを目的に,室内モデルカラムの上・下部からのCO_2放出量とカラム浸透水の水質を調べた.カラム充填物により石灰質土壌(S区),石灰岩礫(L区),その双方(SL区)の3区,また滴下液により硝酸カリ(P),尿素(U),硫安(A)溶液の3区,また滴下液の窒素濃度により0(N0),84(N1),168(N2),420(N5)g-Nm^<-2>の4区を設けた.滴下液量は,各充填物の最大容水量に50mLを加えた量とした.CO_2放出量は,NaOH捕集法により供試液滴下開始から24時間毎に計7回計測した.その結果,1)UならびにA滴下区では,滴下液に由来するアンモニアの硝化過程で生成されたH^+により炭酸塩の溶解が促進された一方,P滴下区ではその促進は認められなかった.2)UならびにA滴下区のCO_2放出量は,N0やPより有意に多く,滴下液中の窒素量に伴い増加した.加えてUとAのCO_2放出量のみ,浸透水中のH^+との間に有意な正の相関関係が示された.3)SIcは,窒素溶液を滴下した区の浸透水は方解石に対して飽和あるいは過飽和状態を示し,またPco_2は一般大気より高かった.4)UとAでは,上述したH^+による炭酸塩の溶解過程で放出されたCO_2総量(直接放出+間接放出量)の6〜8割は間接放出された.以上から,UならびにA滴下区では,生物呼吸等由来するCO_2とH_2Oとの反応に加え,各窒素化合物由来アンモニアの硝化過程で生成されたH^+により溶解された土壌中炭酸塩や石灰岩に由来するCa^<2+>,HCO_3^-,CO_2ガスが浸透水に溶け込み,浸透水中のSIcとPco_2を共に上昇させた.他方,P滴下区では,上記CO_2とH_2Oとの反応生成H^+により溶解された炭酸塩に由来するCa^<2+>,HCO_3^-と,硝酸カリ由来K^+により置換・放出された土壌中Ca^<2+>が浸透水中に溶け込み,浸透水中のSIcとPco_2をともに上昇させた.このようにSIcが正値となり,Pco_2の値が上昇した浸透水がカラム下部より流出してPco_2のより低い大気と接した時点で新陶酔中のCO_2がガス放出されたと考えられた.
- 2012-02-05
著者
-
野村 渉平
東農大院農
-
牛久保 明邦
東農大
-
入江 満美
東京農業大学
-
中西 康博
東京農業大学
-
牛久保 明邦
東京農業大学
-
入江 満美
東京農業大学国際食料情報学部国際農業開発学科
-
野村 渉平
東京農業大学大学院農学研究科
-
中西 康博
東京農業大学国際食料情報学都宮古亜熱帯農場
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