老年看護学実習における看護学生の認知症高齢者に対する関係形成の過程 : 学生一事例の分析
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概要
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背景 老年看護学実習において, 看護学生 (以後学生) が認知症高齢者を理解し, 良い関わりを持つことが困難であると報告されている. しかし, それらは学生の記録に基づいたものであり, 学生の観察の視点や無意識の行動は含まれていない. そこで, 学生がどのように認知症高齢者を理解し関わっていくかという関係形成の過程を明らかしたいと考え本研究に着手した. 目的 介護老人福祉施設における老年看護学実習で, 学生の認知症高齢者に対する関係形成の過程を明らかにする. 方法 対象は, 介護老人福祉施設で認知症高齢者を受け持った学生1名である. データ収集は, 認知症高齢者 (以後A氏) に関わる学生の観察者としての参加観察と半構成質問紙による学生への面接および学生の実習記録とした. 分析方法は, 参加観察, 面接, 記録のデータから, 学生のA氏への関わりに関連する場面を再構成し, 学生のA氏に対する関係が形成された場面を抽出した. 結果 学生が認知症高齢者に対する関係形成に関連した場面は, 次の6つの場面であった. (1)関わる方法がわからず, A氏の表情を観察しその意思を読み取ろうとした. (2)教員のアドバイスによりA氏に関わる手段を発見した. (3)A氏との関わりから得た情報と施設からの情報により, 抱いていた印象が変化し, A氏の理解を深めた. (4)無意識にA氏の行動を観察し, A氏の状態に応じた生活機能を高める看護ケアを行った. (5)A氏の施設における生活目標を理解し, 自立支援をした. (6)レクレーションでのA氏の自発的な行動から, その情報を活用して筋力訓練を指導した. 結論 学生は, 実習初日の認知症高齢者に対する戸惑いをきっかけに思考し, 教員や施設の情報を意識的に取り入れてより良い関わりを模索しながら, 認知症高齢者の生活機能を高める看護を積極的に提供していることがわかった. そのため, 教員は学生の認知症高齢者への関係形成の過程をよく観察し, 学生の思考過程に注目しながらを指導することが必要であると考える.
- 2012-04-00
著者
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