硝酸性窒素汚染地下水浄化壁の浄化効果の長期持続性 : 設置8年経過後の反応剤の状態
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概要
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帯水層地下水の硝酸性窒素濃度を低減させるPLAと鉄粉を反応剤とした透過性地下水浄化壁を地下水帯水層に構築し,8年経過後における反応剤の調査をボーリングにより採取したコアを分析することで行った.反応剤の鉄粉とPLAの分析結果から,8年経過の時点で,鉄粉は中心まで酸化が進行して還元環境の構築能力は失われていたが,残存しているPLAから放出される乳酸によって還元環境の構築と電子供与体の供給が行われ,浄化壁の機能が維持されていたと考えられる.浄化壁設置当初は鉄粉の酸化による酸素消費によって地下水が還元環境化され,設計したとおりに反応剤が機能していたが,酸素濃度の高い地下水に暴露されることにより,設置後8年の間に鉄粉の還元環境構築の機能が失われたと考える.今回の調査結果より,PLAのみでも還元環境の構築と電子供与体の供給が可能であることが示唆された.しかし,過去の室内実験の結果では鉄粉が存在しないとPLAの分解と微生物脱窒の反応が進行しないことを確認しており(Soejima et al., 2010),浄化壁の機能が働くためのスタートアップとして鉄粉は必要と考える.したがって浄化壁を設計する場合には,鉄粉よりもPLAの耐用年数を把握することが浄化壁の耐用年数の設定に重要である.また,本論文に述べた実証試験の浄化壁は円柱状の1本のみの施工であったが,実際の適用にあたっては地下水流路をすべてカバーできるよう,地下水流向に対して垂直に壁状に設置する必要がある.施工方法としては,ボーリングにより施工する場合は円柱状浄化壁の千鳥配置が,トレンチ掘削による施工の場合は壁状の形態が考えられる(副島ら,2007).また,浄化壁が長大とならないよう,水源の手前など防護対象に対して効率的で低コストとなる設置場所の選定が必要である.本実証実験の結果から,硝酸性窒素汚染地下水を揚水することなく,原位置で浄化を行う透過性地下水浄化壁工法は実用化可能であると考える.また,溶存酸素濃度と鉄粉の酸化との関係,乳酸濃度と還元環境構築との関係を把握することで,地下水の状況に応じたより正確な浄化壁の設計が可能になると考える.なお,本研究は環境省の「平成20年度硝酸性窒素浄化技術開発普及等調査事業」にて実施したものである.
- 2012-10-05
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