低濃度カドミウム土壌における玄米カドミウム濃度の推定とリスク評価シミュレーションに基づく対策の検討
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概要
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カドミウム濃度が低い種々の土壌において水稲を栽培し,出穂1週後から畑状態で管理することで玄米カドミウム濃度を顕著に高め,この早期落水時の玄米カドミウム濃度を土壌のカドミウムリスクと仮定した.既存の土壌分析データを用いて土壌pHや土壌カドミウム濃度を変化させ,カドミウムリスクのシミュレーションを行った.1)出穂3週後まで湛水するとほぼ0.2mg kg^<-1>以下に抑制できるものの,落水が早いと玄米のカドミウム濃度は高くなる.このことから,早期落水条件によりカドミウム吸収を増幅させて特定の地域や圃場の基準超過リスクを評価できる.2)土壌pHと0.1mol L^<-1>塩酸浸出カドミウム濃度から玄米カドミウム濃度を推定することが可能で,Z=0.449X-0.336Y+2.067(Z:玄米カドミウム濃度の推定値,X:土壌カドミウム濃度,Y:土壌pH)が得られた.0.1mol L^<-1>塩酸浸出カドミウム濃度と土壌pHは現場レベルでも分析が容易で,蓄積データも多く,推定値には誤差が含まれることを考慮して活用することでカドミウムリスクの評価手法の一つとして有効である.3)土壌pHと0.1mol L^<-1>塩酸浸出土壌カドミウム濃度から早期落水時の玄米中のカドミウム濃度を推定し,地域のカドミウムリスクの低減対策に用いる場合は,現地の土壌のカドミウム濃度の範囲で推定式を作成することが必要である.4)本推定式から得られた玄米カドミウム濃度推定値が0.4mg kg^<-1>以下となる条件のうち,最も効率的な方策は,地域全体で土壌pHの改良目標値を5.5とし,玄米カドミウムが0.4mg kg^<-1>を超えると推定される1%の地点についてのみ,土壌pHの改良目標値を6.0とする,あるいはファイトレメディエーション等で土壌カドミウム濃度を0.5mg kg^<-1>以下とするのが良いと考えられ,本推定により生産者は実践しやすい土壌改良方策を選択できる.5)土壌pH改善により玄米カドミウム吸収抑制を行うには多量の石灰資材の投入が必要であるが,推定式に基づき改善対象圃場を絞り込むことで,土壌改良資材の散布量や資材散布に係る労力を低減できる.
- 2012-08-05
著者
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