なぜ林業公社の債務問題はこれほど深刻化したのか?--不完備情報ゲーム(数値例)による説明--
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概要
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本稿では、現在、約1兆1794億年の長期債務が存在し、その動向が注目を集めている林業公社の債務問題について、その設立の経緯、現状、および経営悪化の要因について概略的に説明を行った後、これを不完備情報ゲームとして定式化する。そして、公的企業の問題点について分析した赤井(2006)およびQian and Roland(1998)等とは異なり、(a)林業公社の債務問題では「信念の伝染効果」により拡大造林政策が過剰に実施され累積債務が膨らんだ可能性があること、(b)林野庁には林業公社を救済する強いインセンティブ(例えば、今後の水源涵養・木材需要への対応・地域の雇用創出・山村振興等の公共目的の達成や補助金の獲得等)が存在するにも関わらず、国が林業公社を救済するか否かの意思決定の後に都道府県が損失補償契約にもとづく負債の返済を行うというタイミングになっているため国が抜本的な解決策をとらない可能性があること、(c)林業公社の資産価値(主に木材の価値)が低迷すると、都道府県が金融機関への一括返済を行うことができないため林業公社を解散することができずに問題が先延ばしにされる可能性があること、しかし、(d)例えば、経常収支比率が高い等の理由により将来の利得よりも現在の利得を重視する都道府県では林業公社が解散される可能性が高まること、を理論的に明らかにする。
- 大阪経済大学の論文
- 2009-09-15
著者
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