学生トライアスリートの競技心理特性に関する研究-日本学生トライアスロン選手権を主題として-
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概要
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210名の日本全国の学生トライアスリートを対象に、学生トライアスロンの競技心理特性を明らかにするための質問紙調査を行った。調査は心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)の実施とその下位尺度に関する主観的重要度、スイム・バイク・ランの3種目における主観的得意度などの回答によって行った。日本学生トライアスロン選手権大会(インカレ本選)の出場の可否およびインカレ本選での成績によって被験者の回答を3群に分け、1要因分散分析を行った。学生トライアスリートの競技心理特性を明らかにすると同時に、インカレ本選に出場するための心理的方略、およびインカレ本選における上位フィニッシュのための心理的方略を検討することを目的とした。 学生トライアスリートの心理的競技能力の特性としては「自己実現意欲」「集中力」が高く、「勝利意欲」「自信」「決断力」「予測力」「判断力」が低かった。主観的重要度との比較では、「忍耐力」「勝利意欲」「自信」「判断力」で主観的重要度に心理的競技能力が追いついておらず、「集中力」「協調性」で主観的重要度以上の心理的競技能力を有していた。 「予選選手群」「本選下位群」「本選上位群」の3群間での分析では、「自己実現意欲」「リラックス能力」「決断力」「予測力」「判断力」において、「予選選手群」と「本選上位群」、および「本選下位群」と「本選上位群」との間に、主観的重要度の差が認められた。また心理的競技能力では、競技意欲因子である「忍耐力」「闘争心」「自己実現意欲」「勝利意欲」、自信因子である「自信」「決断力」、作戦能力因子である「予測力」「判断力」において、「予選選手群」と「本選上位群」との間に差が認められた。 3種目間の得意度分布を分析した結果、「予選選手群」はスイムを苦手としている傾向があり、「本選上位群」は得意度の差が3種目間でほとんど確認されなかった。レースタイプの分類においては、スイムとランを得意とするタイプが存在した。 以上のことから、インカレ地区予選をクオリファイしインカレ本選出場を果たすためには、競技意欲因子・自信因子・作戦能力因子の主観的重要度と心理的競技能力の向上と、スイムの苦手意識の克服が有効であり、またインカレ本選を上位でフィニッシュするためには、「自己実現意欲」「決断力」「予測力」「判断力」の意識の向上と、「自信」の心理的競技能力向上が求められることが示唆された。
- 2013-03-00