分光応答モデルによる2色型色覚に対応した視えの改善
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概要
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2色型色覚異常はLMS錐体のいずれか一つを欠くことに起因する.従来の色覚異常シミュレータの多くはBrettel-Vionet-Mollonの手法をモデルとしてきた.2次元に縮退した射影面での色域と健常者の3次元色空間との対応色を探索し,ディスプレイ上で色の視えを擬似体験できる.既存の手法は広く受け入れられてきたが,2色覚が分光特性の異常に起因しているにも拘らず,いずれも分光的な応答は扱ってはこなかった.本論文は分光ベースの2色型色覚モデルを提案する.新モデルでは,まず較正されたsRGB画像から擬似逆射影によって基本分光成分C^*を抽出する.C^*は健常者に可視の分光成分を表す.次にマトリクスRを2色型に拡張した射影子R_<DIC>をC^*に操作して2色型の基本分光成分C^*_<DIC>を得る.C^*_<DIC>は2色型の可視分光成分を表す.射影子R_<DIC>は2色型色覚に固有の恒等写像演算子であるから,C^*_<DIC>もまた生来の基本分光成分を意味する.この健常者と2色型色覚との基本分光成分の差をとることにより,喪失分光成分ΔC^*_<DIC>を得ることができる.論文では喪失分光成分が2色型色覚者に識別困難な"赤-緑"あるいは"黄-青"の反対色成分と明瞭に対応していることを明らかにし,これをスペクトルシフトによって再び可視化することにより,視えの改善(Daltonization)に利用する.提案モデルは,縮退した基本分光成分C^*_<DIC>をsRGB空間に逆変換することにより,色の視えをシミュレートする.スペクトルシフト法は,新たに導入した評価関数により最適化され,2色覚者と健常者双方に対応した視えの改善に効果的であった.
- 2012-11-01
著者
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