人間と環境との関わりについて : 「住む」ことをめぐって
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概要
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人間と環境との関わりを問い直すにあたって、本論では「住む」ことに関するさまざまな論点の洗い出しを試みる。動物が本能に縛られており環境との関わり方が固定されているのに対して、人間はそうした束縛から解放された仕方で存在しているが故に、「住む」ことにおいて優れていると言える。人間は「住む」とき、「住まい」を作る。「住まい」とは環境のなかに構築された自らに固有の空間であり、これによって人間は安全や安心、快適さなどを実現させようとする。「住まい」は人間が生を営む上での拠点として、人間学的な意味を持っている。さらに、「住む」ことに内在する時間性故に、人間はこの「住まい」に対して独特な感情的つながりを抱く。「住まい」はそれじたいのなかに文化や歴史を沈殿させており、「住む」人間の振る舞いを規定する。「住まい」は人間と環境との媒介としての技術の所産である。技術は、人間が環境に適応することを可能としたが、それ自体が「住まい」という人間にとって新たな環境を作り出す。技術は快適さばかりでなく、「善く生きる」を実現させることもでき、この点において技術は倫理的な次元へと接続している。