初心者の乗馬における精神的・生理的変化に関する研究
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概要
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馬を用いた動物介在活動や療法の研究領域において,馬がもたらす精神的効果に関する報告は,信頼性やその数値化の困難さから多くは見られない。馬と関わる活動に参加することが初めてである多くの対象者において,乗馬に対し慣れや親しみを抱くまでの期間,またそれら精神的変化と乗馬との関係性について明らかにし,初心者が安心し継続的な参加を促すことができる活動内容の構築が馬を用いた介在療法・活動において重要であると考えられる。そこで本研究では,乗馬初心者を対象とし,乗馬に対する精神的,生理的変化を明らかにすることを目的とし,乗馬に対する興味・関心や不安・恐怖等の感情に関するアンケート調査および心拍変動測定による自律神経変動の解析を行った。得られたデータから,初心者が乗馬を重ねるごとの精神的・生理的変化について検証した結果,アンケートでは乗馬に対する不安や緊張といった否定的な感情に関連する項目は回数を重ねるごとに減少し,3回目,4回目において1回目と比較して有意な減少が見られた(P<0.05)。一方,乗馬に対する楽しみや期待など肯定的な感情に関する項目においても,3回目,4回目において有意に上昇した(P<0.05)。また,心拍変動解析では交感神経活動を示すLF/HF値は,乗馬1回目と比較して4回目に有意な減少が見られた(P<0.05)が,それ以外は経時的な変化は見られなかった。一方,副交感神経活動を示すHF値が乗馬中に有意に減少した(P<0.05)が,乗馬後5分間は乗馬前と比較したところ有意な差が見られなくなった。これらのことから,乗馬あるいは馬を用いた動物介在活動は4回程度行うことで初心者の緊張や不安を減少させ,馬に対する愛着や乗馬活動に対して楽しみや期待感といった意欲をもって取り組むことができると考えられた。
- 2012-12-14
著者
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川嶋 舟
東京農業大学農学部バイオセラピー学科
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川嶋 舟
東京農業大学農学部
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川嶋 舟
東京農大 農
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渕上 真帆
東京農業大学農学研究科バイオセラピー学専攻
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内山 秀彦
東京農業大学農学部バイオセラピー学科
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