アイヌ語の衰退と復興に関する一考察
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
アイヌ語は、アイヌ民族の独自言語である。かつて樺太、千島、北海道の三方言があったと言われるが、現在母語話者が残っているのは北海道方言のみとなっており、その母語話者も人数としては極めて少ない。こうした状況は言語学的には危機言語、つまり消滅の危機に瀕した言語として考えられている。アイヌ語の母語話者が減少した背景には、歴史的な要因が大きく関わっている。幕末から明治期の対アイヌ政策がもとらした帰結といえる。アイヌ語の衰退は、アイヌ民族の日本語への転換、日本化が進行してたことを意味する。言語を媒体とした相互の意志・思想・感情の世代間の継承行動の喪失が生じ、民族共同体に統一性が失われ、これまでの日常性が崩壊し、伝統的共同体の解体へと至ることになる。民族的アイデンティティが揺らぎ民族の存在が危ぶまれる状況になっていった。しかし、今日アイヌ民族は民族の権利回復をめざす活動を行っている。その中でアイヌ語の復興活動の持つ意味は大きいものになっている。本稿では、アイヌ語の衰退を歴史的な事実からたどり、アイヌ民族への教化により彼らの習慣、生活様式が変質を強いられていく過程を概観し、その際学校教育がアイヌ語の衰退に大きく関与していたことを明らかにする。次にアイヌ語のように危機言語と位置づけられる言語が衰退に導かれるプロセスを追い、その意味を考察する。そして、民族集団の持つ言語の権利を踏まえ、言語保護のための国際的潮流を参照する。そして最後に、アイヌ語の復興活動の一つとして地域的に繰り広げられているアイヌ語教室について、平取二風谷アイヌ語を例にその活動を概観し、行われている活動の中からアイヌ語復興にとって必要な事柄、復興の意義を考えることにする。
著者
関連論文
- 通信制高校における生徒指導に関する考察
- 教育政策と母語衰退についての考察--明治後半以降のアイヌ社会を中心に
- 1920-30年代のアイヌ民族の言論活動についての考察--自立と協同の視点から
- アイヌ民族と教育権の保障についての考察
- 柳宗悦のアイヌ二論について : 「オリエンタリズム」との関係から
- アイヌ語の復興と普及におけるメディア利用の取り組みについて : アイヌタイムズとFM二風谷放送の事例を中心に
- アイヌ民族の文化と教育の権利について--「アイヌ文化振興法」と国際法規との比較を中心に
- アイヌ民族をめぐる歴史教育に関する一考察--国民国家とアイヌ民族の視点から
- アイヌ民族をめぐる教育に関する一考察--北海道ウタリ協会の活動を中心に
- アイヌ文化の振興に関する考察--阿寒湖アイヌコタンの事例を中心に
- 通信制高校における中高年学習者の学びについての考察 : 都立A高校における事例を中心に
- 通信制高校の託児室と学習権の保障 : 全通研加盟校へのアンケート調査を中心に
- 2002年社会教育研究の動向
- 通信制高等学校についての一考察 : 中退・不登校経験者の視点から(15.学校制度・経営B,自由研究発表II,発表要旨)
- アイヌ語の衰退と復興に関する一考察
- 近代アイヌ差別の発生についての考察
- アイヌ語の衰退と復興に関する一考察