透析患者における歯周病と心臓血管疾患の関係
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概要
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歯周病は最も罹患率の高い疾患であり、歯周組織の慢性炎症を主な特徴とする慢性感染症である。その原因菌は、Porphyromonas gingivalis (P.g.)を初めとする偏性嫌気性グラム陰性細菌で、バイオフィルムという特殊な形態をとり存在する。歯周病原菌自体だけではなく、局所感染により惹起される炎症サイトカインによって全身に炎症が波及することが考えられるようになり、近年、「動脈硬化・心臓病」,「脳血管障害」,「骨粗鬆症」,「誤嚥性肺炎」,「糖尿病」,「肥満や高脂血症」,「早期低体重児出産」などへの影響が報告されている。現在、約30万人が透析療法を受け、そしてその約1割の患者が毎年亡くなっている。その死亡原因として、脳血管障害と心臓を含めた血管系障害は32.9%であり、感染症を含めると59.4%となる。これらの透析患者の生命予後を大きく影響する因子として、炎症性サイトカインが考えられる。栄養障害,炎症,動脈硬化が悪循環となり、患者の生命予後に影響を与えるmalnutrition, inflammation and atherosclerosis症候群においても、その悪循環の中心には炎症性サイトカインが存在する。本稿では、この炎症性サイトカインの原因として歯周病に着目し、透析患者における歯周病と心臓血管疾患の関係について自験例を含め検討を行った。透析患者45名は全員歯周病の指摘を受けたことがある。これらの患者の歯周病原菌血中IgG抗体価を測定したところ、40%でP.g.のみ陽性であった。P.g.陰性患者に比べ、糖尿病の患者ではP.g.に感染することにより心臓血管疾患および脳血管障害を併発する可能性が強いことが認められた。また、全抜歯後10年以上経ても血中P.g.菌抗体価が高く、脳梗塞,心筋梗塞を併発している糖尿病の患者もいた。 これらのことから、歯周病原菌,特にP.g,と心臓血管疾患および脳血管障害との関係が示唆され、特に糖尿病のある透析患者では血管障害が重篤になると思われる。
- 2012-07-31
著者
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