重要な欠陥開示企業の裁量行動分析
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概要
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本研究の目的は,内部統制報告書において「重要な欠陥」を開示した企業(重要な欠陥開示企業)をサンプルとして当該企業の裁量行動が機会主義的意図あるいは情報伝達的意図を有するのかを解明することである。本稿では投資者の意思決定支援機能を果たす裁量行動に限定したうえで,投資者にとって財務諸表数値が予測の適切な指標となりかつ会計発生高の質を高める裁量行動を情報提供的裁量行動,予測の適切な指標とならずかつ会計発生高の質を低める裁量行動を機会主義的裁量行動と定義しておく。まず第1に,多変量分析結果において予測精度と会計発生高の質問には有意な関連性があることから,重要な欠陥開示企業の裁量行動が機会主義的意図を有する可能性が高いこと,次に裁量行動が機会主義意図を有するかどうかの頑強性とその裁量行動が会計的裁量行動か実体的裁量行動かに関する検証結果から,裁量的発生高が会計発生高の質と有意な関連性があり,重要な欠陥開示企業の裁量行動は裁量的発生高を用いた会計的裁量行動であり機会主義意図を有する可能性が高いこと,さらに多変量分析結果において会計発生高の質が会計発生高と有意な関連性があることから,重要な欠陥開示企業は裁量行動を会計発生高に施し会計発生高の質を低下させていること,が示唆できる。
- 2012-03-31