生物学的製剤を用いた分子標的治療の進歩(4)乾癬の病態と生物学的製剤による治療
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概要
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乾癬は主要な皮膚疾患の1つで、尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿胞性乾癬、乾癬性紅皮症に分類される。尋常性乾癬は厚い鱗屑を付ける紅斑が多発し、関節症性乾癬は皮疹のみならず関節の障害をきたす。膿胞性乾癬は膿疱を伴った浮腫性紅斑が多発し、発熱や他臓器の合併症を伴う重症の乾癬である。乾癬性紅皮症は紅斑が全身にびまん性に拡がり難治である。いずれも整容的、機能的に大きく障害され、患者のQOLは著しく低下する。乾癬の病態は複雑であるが、主たる経路は、種々の細胞よりのTNF-α刺激により樹状細胞からIL-23が産生され、それによりTh17細胞が活性化し、IL-17やIL-22といったサイトカインを分泌、これにより表皮細胞の過増殖が引き起こされる、と考えられている。その他にもIL-12より始まるTh1経路も関与している可能性がある。既存の治療はステロイドや活性型ビタミンD3の外用薬、光線療法、etretinateやmethotrexate、cyclosporinの内服である。これらを組み合わせても難治な症例が存在していたが、その多くは生物学的製剤の登場によりコントロール可能となった。本邦の乾癬治療における生物学的製剤は現在3剤あり、キメラ型抗TNF-α抗体であるinfliximab、ヒト型抗TNF-α抗体であるadalimumab、ヒト型抗IL-12/23p40抗体であるustekinumabである。infliximabとadalimumabは乾癬の病態の上流にあるTNF-αを抑制する。IL-12/23p40はIL-12(Th1)とIL-23(Th17)に共通するサブユニットであり、ustekinumabは下流のこの両経路を抑制する。さらにいくつかの製剤が治験中であり、今後も選択肢が増える予定である。
- 2012-04-25
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