EUにおける臓器提供の同意方式をめぐる国際的調整のあり方と倫理的課題
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概要
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EUでは、わが国と同様、慢性的な提供臓器の不足が生じており、これを解消するため、EUレベルで政策的対応がなされてきている。本稿では、欧州における臓器提供の同意方式をめぐる国際的調整のあり方と同意方式の倫理性をめぐる議論に焦点を当てる。第1に、EU各加盟国における脳死を含む死体からの摘出による臓器移植の現状について概観し、EUレベルの臓器移植政策が要請されることになった背景とその行動計画を明らかにする。第2に、加盟国レベルでどのようにドナーの意思表示の評価が制度化され、実施されているのかを検討する。第3に、同意方式のドナー数への影響を検討し、ドナーの同意方式のEU加盟国間における収斂可能性とその倫理性について考察する。明示的同意方式から推定的同意方式へと向かう方向にはあるもののドナー数増大への効果は明確ではなく、その倫理性についても課題は少なくない。意思表示評価制度は、各国の文化的、歴史的、倫理的背景に基づいて形成されてきていることに鑑み、各国が臓器取引や移植ツーリズムなどに対処するため、臓器の需要と供給のギャップを縮小するという共通の目標に向け、各国の社会的合意を得られる対策が必要となる。
- 2010-09-23
著者
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