加齢変化が咀嚼時の脳機能活動に及ぼす影響
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概要
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高齢化が進む中で,咀嚼が心身に及ぼす効果が注目され,口腔機能の維持は生命維持に不可欠であることが明らかにされている.口腔に機能障害を持った際の全身や脳機能に及ぼす影響は,動物実験を中心に検討が進められており,ヒトにおける口腔機能と脳機能との関係については不明な点が多い.近年,非侵襲的脳機能マッピング法が広く応用されるようになり,健常若年者におけるTapping,Clenching,咀嚼運動などの口腔機能と脳活動の基礎的データが集積されている.しかし,健常高齢者における加齢と口腔との関係を脳機能の観点から検討した報告はほとんどない.そこで,本研究では,加齢が咀嚼時の脳機能活動に変化を与えるか否かを明らかにすることを目的とし,若年者と高齢者の咀嚼時の脳機能活動の変化を3T-fMRIを用いて検討した.対象は,健常若年有歯顎者9名と健常高齢有歯顎者10名とした.実験課題は咀嚼様運動と咀嚼運動の2課題とした.実験タスクは30秒間の安静と,30秒間の運動課題を交互に3回繰り返すブロックデザインとし,画像解析には画像解析ソフトSPM5を用いた.その結果,単純な開閉口運動に近い咀嚼様運動時では,若年有歯顎群と高齢有歯顎群とも一次運動野,体性感覚野,補足運動野で同様に賦活を認め,賦活に違いを認めなかった.しかし,咀嚼運動では若年者と高齢者の脳賦活の様相は異なることが明らかとなった.若年有歯顎群では,一次運動野,補足運動野,体性感覚野,視床,大脳基底核,小脳に賦活を認めた.高齢有歯顎群では若年有歯顎群で認めた賦活部位に加えて,前頭前野での賦活と補足運動野の賦活の広がりを認めた.このことより,高齢者において同じ運動に対してより広範な脳領域が活性化されることは,加齢により低下した機能を代償するために若年者では活性化されない運動神経回路を構築して機能を維持している可能性が示唆された.
- 2011-05-10
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