フリッツ・イェーデの音楽における「創造」のための教育
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概要
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本稿では20世紀ドイツ語圏において活躍した教育実践家フリッツ・イェーデの提唱する音楽における「創造」のための教育について理論と実践の両面から検討し,その方法論において反主知主義や生徒指向の授業と専門的な能力の要求や教師主導の授業という対立的2側面がいかに共在するのかを明らかにした。再現や鑑賞も含むすべての音楽行為において,作曲家の「創造」プロセスである「着想」と「展開」という2つの状況を辿ることを「創造」と捉えるこの教育は,創作よりもむしろ,芸術音楽を「創造」的に再現し鑑賞すること(「再創造」)を目指すものであった。その理論の特徴は,作曲家の「創造」体験を辿るべく,「創造」の源となる内面的なものを生成させ(「着想」段階),次に音楽的な表現の感覚を生成させ,さらにその感覚を深化させ芸術音楽を理解させることを目指す(「展開」段階)という三段階で構成されている点にあった。実践では,内面的生成が自由に求められる「着想」段階では生徒指向の授業が行われる一方で,「展開」段階では生徒指向でありつつも音楽的な表現の感覚が明確に教授されていた。つまりこの教育における上述の対立的2側面は,音楽における個別に自由な内面的側面と専門的共通言語を用いる表現法の側面という2つにそれぞれ対応した方法論を取るかたちで共在していた。また分析的知識ではなくイメージの説明による専門的側面の教授に,主知主義の克服が見て取れた。
- 2011-03-31
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