世界遺産条約のめざすもの : ICOMOS(国際記念物遺産会議)の議論から(<特集>世界遺産)
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概要
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1992年にわが国が世界遺産条約を批准したのは,72年に条約がユネスコ総会で締結された20年後のことである。以前の無関心ぶりと比較すると,その後14年間の国内の様子は,にわかな世界遺産ブームといえよう。テレビ番組出版界,観光業界それぞれに世界遺産を冠した商品があふれている。特に,近年の豊かな高齢者たちの旅行好き,文化好きの傾向に世界遺産は合うらしい。踏破し,揃え,集めたいという国民の嗜好を刺激するのかもしれない。その一方,全国各地では地元の文化財を世界遺産にという活動が盛んになった。かつて,白神山地のブナ林保存を訴える活動が,わが国の世界遺産条約批准に大きな影響を与えた。同様に,現在の文化財保護法,自然環境保全法などで守りきれない遺産を,世界遺産というタイトルをもつもう一つの法体系,制度的枠組み,社会的認知などで一層の保護・保全強化をねらう活動が広がったとも考えられる。その反面,世界遺産のタイトルだけが欲しいという活動も多いだろう。しかし,世界遺産はどうして生まれたのか。ユネスコは,今それをどうしようというのか。なぜ世界遺産を守るのか,なぜ各国は登録を続けるのか。これら素朴な疑問について国内では十分な議論が尽くされているとはいいがたい。マスコミは,世界遺産を美術全集や観光案内と同じように紹介することが多く,一般市民の関心もこの域をでない。登録に向けた各地の動きには,国宝・重要文化財の上の「肩書き」と考えるもの,ローカルな価値評価を世界に発信するものなど様々な認識がある。実際世界遺産は多様性をもったグローバルな文化活動である。しかし,そうはなりにくい地元にはどんな問題があるのだろう。本論では,世界遺産条約成立から現代までの経緯から文化遺産に関する議論の展開を探り,国内の議論とは異なった点が多い国際的状況を点検する。次に,近年話題の中心になった文化的景観産業遺産,文化的ルートなど新しい種類の文化遺産を取り上げ,あわせてそれらの遺産の保護のために必要な管理計画を紹介し,管理運営上も問題となる文化遺産と観光の問題を紹介しつつ,地域社会と文化遺産の関わりの問題を探る。
- 2006-10-31
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