黒潮の非大蛇行離岸流路期における相模湾の50-70日周期の流速変動

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相模湾において,2008年に水中設置自動昇降ブイシステムによる係留観測を行い,湾内の流速変動について調べた。日本南岸海域の黒潮流路は,6月3日付近に非大蛇行接岸流路から離岸流路へ遷移し,それにともなって湾内の流動構造が一変した。6月3日以降,黒潮は比較的安定した非大蛇行離岸流路を取り,その間,湾中央部では水深200m付近に最大振幅を持つ50-70日周期の流速変動が卓越した。この流速変動は湾北部の高気圧性の循環の形成に起因し,高気圧性の循環の消長は房総半島沖の黒潮流軸の変動と対応していた。この高気圧性の循環は,26.2-26.6σ_θ層のレンズ構造の内部に形成され,湾北部でこの循環が形成されるとき,水深200m以浅では下層水の湧昇が生じた。一方,房総半島沖の黒潮流軸の変動は,約60日周期で生じるS字の蛇行によって特徴づけられ,この蛇行が解消されるとき,湾北部で高気圧性の循環が形成された。この黒潮流軸の変動は,遠州灘から東進して来る擾乱と関連し,擾乱が相模湾沖に到達するとき,黒潮流軸の蛇行も解消された。以上のことから,非大蛇行離岸流路期には,遠州灘を起源とする擾乱によって房総半島沖で黒潮流軸が変動し,それに付随するように,湾北部では高気圧性の循環が形成されることが明らかになった。さらに,この高気圧性の循環の形成が,湾内に50-70日周期の流速変動を引き起こし,この変動は非大蛇行離岸流路期に生じる典型的なものであると考えられる。
2011-07-15

黒潮の非大蛇行離岸流路期における相模湾の50-70日周期の流速変動

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