シイタケ収穫後の子実体老化に関与する酵素の研究
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概要
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シイタケ子実体は,収穫直後から急激に子実体の褐変化や軟化といった老化現象が起こる.子実体の老化は,シイタケの品質の著しい低下を引き起こす.本論文ではこれまで著者の所属する研究センターで行ってきた収穫後の老化に関わる酵素の研究を中心に,収穫後の子実体の老化のメカニズムを紹介する.きのこの子実体の着色には,ラッカーゼやチロシナーゼといった,フェノールオキシダーゼ類が関与していると考えられている.シイタケの収穫後の子実体の褐変現象に関しては,lcc4とよばれる遺伝子にコードされるラッカーゼとtyrとよばれる遺伝子にコードされるチロシナーゼが関与していることが明らかになっている.両遺伝子は,シイタケ収穫後に急激に発現量が上昇する.収穫後の子実体の軟化は,子実体細胞壁の分解によるものと考えられる.きのこの細胞壁はβ-1,3-グルカン,β-1,6-グルカン,キチン,キトサンなどの多糖類で構成されている.よって,収穫後の細胞壁の分解には,これらの多糖類の加水分解酵素が関わっている.シイタケ収穫後の細胞壁の分解には,β-1,3-グルカナーゼ(exg2,tlg1),β-1,6-グルカナーゼ(pus30A),キチナーゼ(chi1,chi2),キトサナーゼ(cho1)などが関わることが明らかにされている.シイタケの子実体細胞壁構成多糖の一つであるβ-1,3-1,6-グルカンであるレンチナンは,抗がん治療に利用されている.そのレンチナンは,シイタケ収穫後に,β-1,3-グルカナーゼ活性上昇の結果,急激に分解されてしまうことが知られている.収穫後のレンチナンの分解には,軟化に関わるβ-1,3-グルカナーゼをコードする遺伝子であるexg2およびtlg1が関与することが明らかになっている.一方,これまでの研究で,exp1とよばれる転写因子が,子実体収穫後の劣化に関わる遺伝子の制御に関わっているのではないか,ということが示唆されている.以上のように,収穫後の老化メカニズムを明らかにすることで,収穫後の品質の低下を防ぐ手法の開発につながるのではないかと考えている.
- 2011-07-31