分子レベル放射性炭素年代測定法と地球化学・環境試料への応用
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概要
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地球化学の新たな手法として,分子レベルの放射性炭素年代測定法 (CSRA) が分取キャピラリーガスクロマトグラフィーや加速器質量計14C 分析のためのマイクロスケールのグラファイトターゲット前処理技術の開発により可能になった.Eglinton et al. (1996)による報告以来, この新しい手法は,今日までに様々な地球化学的試料に応用された.我々は,この方法の原理と基本的な操作法,地球化学的試料への応用例をレビューする.さらに,これらの将来的な展望も議論する.これまでCSRA 法は,海洋堆積物,石油,土壌,大気エアロゾル試料に応用されてきた.その結果,個々の有機分子の起源,堆積物中における微生物の用いた基質の種類等の議論,また大気エアロゾル中の長距離輸送経路の議論等,従来議論されてこなかった地球化学的プロセスがCSRA 法によって明らかになってきた.こうした研究例は少ないながらも,CRSA 法のバイオマーカーへの応用は,重要な地球化学的手法になると思われる.A method of compound specific radiocarbon analysis (CSRA) has recentlybeen developed. This method includes isolation of individual compounds by preparativecapillary gas chromatography, preparation of graphite target for individual compounds,and 14C measurement by accelerator mass spectrometry. Since the first report byEglinton et al. (1976), this CSRA method has been applied to various geochemical andenvironmental samples. In this paper, we review the principle and procedures of the newtechnique and the recent results obtained by the application of CSRA method togeochemical samples. We also discuss the significance and future perspectives of CSRAmethod in the fields of geochemical and environmental studies. So far, the CSRAmethod has been applied to marine sediments, oils, soils and atmospheric aerosols.Based on the CSRA studies, different geochemical processes have been discussedincluding an origin of individual organic compounds, the way microbes use thesubstrates in sediments, and a long-range atmospheric transport of aged organiccompounds from source regions. Although the reports associated with CSRA are stillvery limited, we suggest that this method would become more important in the futuregeochemical and environmental studies.
- 日本地球化学会の論文
- 2002-12-20
著者
-
柴田 康行
国立環境研究所
-
柴田 康行
独立行政法人 国立環境研究所 化学環境研究領域
-
松本 公平
海洋科学技術センター
-
内田 昌男
海洋科学技術センター
-
内田 昌男
国立環境研究所
-
内田 昌男
独立行政法人海洋研究開発機構
-
松本 公平
北海道大学低温科学研究所:(現)海洋科学技術センター固体地球統合フロンティア研究システム
-
松本 公平
固体地球フロンティア
-
柴田 康行
国立環境研究所 化学環境研究領域
-
柴田 康行
独立行政法人国立環境研究所加速器ms施設
-
内田 昌男
独立行政法人 国立環境研究所
-
松本 公平
東京都立大学院理学研究科
-
川村 公隆
北海道大学低温科学研究所
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