恩恵と災害リスクを包括する住民主体の流域管理に向けて : 砥川流域協議会の事例から
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概要
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1997年の河川法改正以降,さまざまな河川において,河川管理計画策定のさいに住民参加の場が設定され試行されてきた。近畿地方の淀川水系流域委員会は,専門家と住民が対等な立場で参加し,新たな治水観に基づく河川管理計画策定をめざす画期的な試みであった。しかし国土交通省によって休止され,その成果が計画に生かされないままとなっている。現在,河川法改正の趣旨は停滞し,方向を見失っているように見える。本稿では,長野県砥川流域協議会において流域住民が河川計画案を協議し合意に達するまでの過程を分析し,その背景や根底にあるものを,住民の流域へのかかわりを中心に考察した。そのかかわりとは,藩政時代以来の上流域の山での入会による資源採取,山を原因とする下流域での水害・土砂災害という,共通の歴史的経験である。流域の上-下流域は,「恩恵」と「災害リスク」という2つの相反する要素が一体となった関係性,すなわち「恩恵/災害リスク」軸でつながり,人々の「流域意識」生成の根底にこの軸があったことが論証された。住民が協働することで「流域」を外在化した協議会の意義も明らかとなった。この事例に注目することで,地方の中小河川における流域住民主体の「流域管理」の新たなあり方を考えることができよう。
- 2010-11-10
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