炭化木片を利用した火砕流堆積物の定置温度の推定 : 十和田大不動火砕流堆積物と十和田八戸火砕流堆積物を対象にして
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概要
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クロマツの材を火山灰中に埋めて加熱実験を行い,元素分析,反射率測定,赤外吸収測定を行った.その結果,加熱温度(T)と水素対炭素の原子比(H/C)との間にはT=276・(H/C)^<-0.66>,反射率(Ro)との間にはT=201×(Ro)+264,赤外吸収での吸収強度比(R_A=(CH_2+CH_3)/[(CH_2+CH_3)+(C=C)])との間にはT=-58・ln(R_A)+245の関係があることが判明した.これらの関係式を火砕流堆積物の定置温度を推定するためのH/C原子比温度計,反射率温度計,赤外吸収温度計と考えた.更新統の十和田大不動火砕流堆積物と十和田八戸火砕流堆積物が分布する4か所の露頭から,27個の炭化木片を採取し,元素組成,反射率,赤外吸収スペクトルを測定し,それらの値を各温度計に代入し火砕流の定置温度を推定した.定置温度の推定値は,3種類の温度計間で相関係数0.73〜0.85と良い相関を示す.一か所の露頭の一つの火砕流堆積物に対して推定された定置温度は,温度計の種類に関係なく最大で72℃の幅を示す.沢田ほか(2000a)は,火砕流堆積物に含まれる1本の巨大な炭化木から8試料の木片を採取して,その元素組成から定置温度を推定しているが,その温度幅は69℃である.この値は,本研究の72℃の温度幅とほぼ等しく,本研究の定置温度推定値は全て測定誤差の範囲内に入ると考えられる.岩石片の熱残留磁気から定置温度を推定する方法に比べ,炭化木片から定置温度を推定する方法は容易で,迅速,正確であり,3種類の温度計で独立に測定した値を比較検討することも容易である.
- 2011-05-25
著者
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氏家 良博
弘前大学理工学研究科
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伊藤 明日香
弘前大学理工学研究科:(現)社団法人産業環境管理協会
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小山 玄介
弘前大学理工学部地球環境学科
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小山 玄介
弘前大学理工学部地球環境学科:(現)株式会社アルファシステムズ
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