シンポジウム「統合医科学研究所(TIIMS)の紹介と今後の展望」(5)ゲノムコピー数異常と疾患iPS細胞を用いた病態解析
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概要
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ポストゲノムの時代となり、ヒトの全ゲノムの一次配列が明らかになったことにより、全染色体領域のゲノムコピー数をマイクロアレイを用いて網羅的に解析することが可能となった。それにより、ゲノムコピー数がヒトによって異なる領域が存在することが明らかとなってきている。その一方、非常に微細なゲノム断片の欠失や重複が疾患の原因となっている場合があることがこの数年の間に次々と明らかになってきている。実際にアレイCGH法を用いて原因不明の小児神経疾患患者約500名を対象にゲノムコピー数を解析した結果、約15%で何らかのゲノムコピー数異常が存在することを明らかにしてきた。この中には過去に報告のない、まったく新規のゲノムコピー数異常も多数認められた。それらのゲノム領域の中で、中枢神経において強い発現を示す遺伝子に関して、ゼブラフィッシュのホモログ遺伝子をノックダウンしたところ、小頭症などヒトと同じ症状を示したため、それらが疾患関連遺伝子であることが証明できたものもある。しかし、ゼブラフィッシュなどの実験動物ではホモログ遺伝子が存在しない場合や、ヒトの大脳は高次に発達しているため実験動物では証明できないなど、限界もあった。そこで人工多能性幹細胞、いわゆるiPS細胞を当該患者由来細胞から作成し、疾患臓器に分化誘導することにより、in vitroで病態解析するシステムを構築した。現在、疾患特異的iPS細胞を神経系に分化誘導させ、遺伝子発現の状態を検索するなどの解析を進めている。
- 2011-06-25
著者
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下島 圭子
東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート
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山本 俊至/下島
東京女子医科大学統合医科学研究所/東京女子医科大学統合医科学研究所
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山本 俊至/下島
東京女子医科大学統合医科学研究所
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山本 俊至
東京女子医科大学統合医科学研究所
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山本 俊至
東京女子医科大学医学部小児科学;東京女子医科大学統合医科学研究所
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山本 俊至
東京女子医科大学付属統合医科学研究所
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