1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)誘発一側性サルパーキンソン病モデルの確立
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概要
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背景:1-Methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP)を用いてパーキンソン病モデルサルを作製する場合、その効果には個体差が大きいことが問題となる。そのため作製したモデル動物がパーキンソン病様の病態を示しているかどうかは、脳の病理組織学的検査と線条体のドーパミン量から判断する必要がある。しかし作製した病態モデル動物を治療薬の開発に用いるためには、生きた動物を信頼性の高い客観的方法によって評価する必要がある。本研究は、行動に基づいてパーキンソン病モデル動物として適切か否かを判断するために有用な評価基準を設定する事を目的として行った。方法と結果:一側性パーキンソン病モデルを作製するために、同年齢の雄カニクイザル 16個体に片側頸動脈からMPTPを2回投与した。パーキンソン病症状について報告されている基準に基づいてスコアリングを行い、さらにL-DOPAとApomorphineを投与することで見られる旋回行動について、次の5つの評価基準を設定したうえで観察を行った。(1)パーキンソン病様症状と診断される症状が一つでも観察されること、(2)溶媒のみを投与した時には非投与側に連続して旋回行動を行わないこと、(3) Apomorphine投与後は非投与側へ連続した旋回行動が15分以上にわたって見られること、(4)低用量のL-DOPAによって誘発される旋回行動が20分以上持続すること、(5) L-DOPAの用量に依存して旋回行動の持続時間が延長すること。以上の評価基準に基づいて、16個体のうち9個体は適切なモデル動物と判断された。その内の8個体の線条体ドーパミン量を測定した結果、8個体すべてについてMPTP投与側の線条体ドーパミン量は非投与側に比べて有意に減少していた。結論: 本研究で示した5つの評価基準は、MPTPを投与したカニクイザルが一側性パーキンソン病モデルとして適切か否かを判断する上で有用である事を示している。
- 2009-08-15
著者
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藤井 順逸
山形大学大学院医学系研究科生化学・分子生物学講座
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藤井 順逸
山形大学大学院医学系研究科生体分子機能学講座
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藤井 雅典
山形大学大学院医学系研究科生命環境医科学生体分子機能学講座
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大和田 一雄
山形大学大学院医学系研究科生命環境医科学動物実験医科学講座
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