ドバイにおける行政改革とグローバル化戦略 : 両刃の開発戦略の研究(1990〜2009年)
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概要
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本稿は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国における行政改革とグローバル化戦略の試みについて論じるものである。1971年に独立したUAEは、わずか30余年の間に豊富な石油資源を背景に急速な発展を遂げた。一方で、UAEの一首長国であるドバイは、独自に経済特区を設置し、中継貿易や国際金融、観光などの非石油部門を中心に経済開発を進めた。その結果、今日では中東を代表する経済拠点にまで成長した。このようなヒト・モノ・カネ・情報などを集中させ、自らをグローバル化させることで成長を遂げる開発方針を「グローバル化戦略」と呼ぶことができる。2008年の世界金融危機や2009年の「ドバイ・ショック」は、皮肉にもドバイが経済・金融の側面において世界と一体化したことを証明した。これまでの研究において、ドバイの急速な発展はドバイ政府による経済政策を中心に論じられてきた。しかし、同様に重要なことは、経済政策を実務面で支える「インフラ」としての行政機能である。すなわち、ドバイはグローバル化戦略を支える機能を強化するために、経済政策と同時に行政改革を展開したとみなすことができる。そこで、本稿ではドバイの経済発展を支える行政機能の発展について、ドバイ政府の財政構造や行政資料、具体的な成果の検証を通じて実証的に論じる。その上で、ドバイはどのような行政改革を導入したのか、そしてその結果はどのようなものかを明らかにする。はじめに、先行研究と行政改革の世界的な潮流を整理し、理論的枠組みとしてのニュー・パブリック・マネジメント(NPM)を検討した。そして、連邦国家におけるドバイの位置づけを政治・経済的側面から明らかにしたうえで、ドバイの発展プロセスを概観し、さらにグローバル化戦略とは何かを示す。そこでは、ドバイの経済的発展と政府系企業の活動が、ドバイ政府の財政構造と密接に関係していることを論じた(第II節)。つぎに、ドバイの行政システムを明らかにし、NPMの枠組みを用いてマクトゥーム首長期(1990〜2005年)とムハンマド首長期(2006〜2009年)における行政改革の実践について論じた(第III節)。以上の議論から、ドバイにおける行政改革の実績と特徴を明らかにし、行政改革を導入した理由と意義を検証した。さらに、一連の金融危機が行政改革に与えた影響を評価した(第IV節)。本稿の議論を通じ、ドバイの行政改革はグローバル化戦略を支える重要な役割を担っていたことが明らかになった。そこでは、NPMの様式が採用されており、一貫した行政改革のプロセスを経ていることがわかった。しかし、このような行政改革は急激な経済成長を後押しし、社会に否定的な影響を与えた側面も指摘された。さらに、世界金融危機とドバイ・ショックによって、行政改革と経済戦略によってつくられた、ドバイ政府の構造的な財政問題が露呈した。その意味で、ドバイにおける行政改革は、経済発展とドバイ・ショックの遠因を生みだした「両刃」の開発戦略の一端を担ったと言える。
- 2011-01-05
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