科学知の構成と社会:社会と科学の相互観察
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概要
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本稿の目的は差異を導く認識の枠組みを科学が構成することを示すことにある。これは認識のための条件を満たす妥当な座標を指定するという問題である。差異はわれわれの生活世界に認識をもたらす。本研究で問題となる基本原理は、自己産出的作動に対応する一般システム理論である。この典型的システムがオートポイエテック・システムである。ここでは科学というものをオートポイエティック・システムとして定義したい。認識の一般化が知識をもたらし、そして、知識が知識を産出する。この過程がオートポイエシスと呼ばれることになる。システムの同一性は閉鎖性によって特徴づけられる。しかし、ここで重要なのは閉鎖性は孤立を意味しないということである。このとき、システムの開放性は社会的関係の可能性を意味することになる。科学は社会のなかで作動する。けれども、社会も科学も独立したシステムなのである。この議論において最も重要なのは、科学的な知識とわれわれの社会が、互いに、観察に基づいたコミュニケーションを必要とするということにある。そして、科学と社会の相互観察のなかに科学知の性質を見いだせるのである。
- 2011-03-01