銀行規制,信用調整および認知バイアス
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概要
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本稿では,社会厚生における自己資本比率規制の有効性について分析したBrisandCantale(2004)のモデルに,Catarineu-Rabelletal.(2005)のリスク・ウェイトの設定を導入し,さらに,行動ファイナンスで示されるウェイト関数を組み込んだモデルを構築することにより,預金保険適用時に生じる社会厚生の損失を考慮した自己資本比率規制が,貸出市場および社会厚生に及ぼす影響について考察する。その結果,銀行が将来の経済見通しについて,行動ファイナンスで示されているような認知バイアスが生じている状況においても,預金保険適用時に生じる社会厚生の損失を考慮した自己資本比率規制が,利己的な銀行行動を抑制することにより,貸出量の調整を適正に誘導することができることが明らかにされた。さらに,このような自己資本比率規制が,社会厚生を改善させることができるということが示された。リーマン・ショックに端を発した金融危機を踏まえ,新たな銀行規制の1つとして,可変的な最低所要自己資本比率の導入について議論されているが,本稿で示された自己資本比率規制の在り方は,その一例であると言える。
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