アマガエルの同期発声行動に潜むフラストレーション研究(招待講演)
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概要
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ニホンアマガエルは日本全域に生息しており、水田などにおいて春から夏にかけ集団で鳴く様子を観察できる。オスガエルは単独では1秒間に4回程度の間隔で周期的に鳴く一方で、目の後ろに鼓膜を備えており他個体の発声を含む周囲の音声情報を認識できる。そのため、実際のフィールドにおける集団発声行動は、多数の周期振動子が空間的に分布し互いに影響を及ぼしあう結合振動子系として数理的に理解できるだろう。著者らはまず2匹のアマガエルを用いた室内録音実験を行うことで、2匹が交互にほぼ位相差πで同期して鳴く逆相同期現象を実験的に見出した。さらに振動子モデルを数理的に研究することで、実験的に観測した同期現象をモデル内における安定平衡状態として説明できることを示した。他方で、このような2体系においては、全てのペアが互いに逆位相πで同期することは不可能でありフラストレーションが生じることになるからである。次に著者らは、2体系の振動子モデルを3体系に拡張した数理研究を行うことで、同相同期する2匹が他の1匹と逆相同期して鳴く1:2逆相同期状態や3匹がほぼ3分の2πの位相差で順番に鳴く三相同期状態などの同期現象が実際に観測される可能性を示した。本稿では、アマガエル2体系に関する実験・数理研究、3体系に関する数理研究を紹介する。
- 2010-07-26
著者
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合原 一究
京都大学理学研究科
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合原 一究
京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻
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合原 一究
京都大学大学院・理学研究科・物理学宇宙物理学専攻・物理学第一教室・非線形動力学研究室
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合原 一究
京都大学大学院・情報学研究科・複雑系科学専攻・藤坂研究室m1
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合原 一究
京都大学大学院・理学研究科
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