精神病者監護法の「監護」概念の検証
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概要
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本稿では,1900(明治33)年成立の精神病者監護法を,日本の精神障害のある人に対する対策の嚆矢とし,同法の中心概念である「監護」概念を明らかにする.同法は,結果として精神障害のある人々の劣悪な処遇状況を生み出し,現代に至るまで地域自立生活を阻む要因として影響を及ぼし続けているといってよい.しかし,立法当時の立法者である内務省の見解や帝国議会議事録の審議を分析すると,「精神病者」は人権侵害されやすく保護すべき存在としてとらえられており,同法が示す「監護」は,「精神病者」の保護を目的として成立したことが分かる.ただし保護の方法としては公権力による監護義務者の管理という消極的介入にとどまり,治療の視点も欠けていたため,結果として法の運用上,「精神病者」の劣悪処遇が進み,現在の諸問題に結びついていくことになったことを明らかにした.
- 2010-11-30
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