久美浜湾における無酸素水塊解消の試み(シンポジウム:貧酸素水塊)
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概要
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久美浜湾(最大水深20m,水面面積7Km^2)は,幅30m水深3.5m(工事前)の水路で日本海に連なる,汽水の潟である.初夏から初冬にかけて,底層に無酸素水塊(DO<20%)が発達し,増養殖漁場の開発の障害となっている.この無酸素水塊を解消し漁場環境を改善するために,湾口を拡幅して海水交換を増大させる事業が行われた.しかし,湾口の拡幅工事後も無酸素水塊の規模は変わらなかった.調査の結果,久美浜湾底層の無酸素水塊は,外海の海況の季節変動が,海水交換を通じて,湾内に反映した結果として形成されていることが判った.湾外の海水すなわち日本海西部沿岸の海水の密度は,晩春に最大となり夏に低下する.このため,初夏から冬にかけて湾内に流入する外海水は,晩春に流入した外海水によって形成された湾内底層水の内部に進入できない.この停滞した底層水が底泥の酸素消費を受けて無酸素化するのである.海水交換による海水の置換が,この過程の決定的要因である.したがって,海水交換の増強は,底層の無酸素水塊の解消ではなくその強調をもたらしたのである.しかし一方で,秋から初冬にかけて無酸素水塊の上部に発達していた低酸素水塊(20%<DO<40%)は,増大した海水交換量によって,1/3に低減され,漁場として利用可能な領域の拡大が成就された.
- 1989-02-28
著者
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