低出力超音波パルスがラット脛骨の骨欠損部治癒過程に及ぼす影響
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概要
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インプラント治療と歯周病治療後の骨の再生に,メカニカルフォースが効果的であることが知られている.近年,メカニカルフォースの一つであるLIPUS(Low-intensity Pulsed Ultrasound)治療は,骨折の治癒を促進させることが知られている.それは,ultrasoundが骨形成に良い刺激を与えるだけではなく,骨芽細胞の分化を引き起こすためである.しかしながら,LIPUSによる骨細胞においての細胞的事象はまだ明確にされてはいない.今回の実験は,形態学的・免疫組織化学的分析を用いて骨欠損部の骨のリモデリングにおけるLIPUSの生物学的効果を調べることを目的として行った.雌SDラットを使用し,デンタルバーを用いてエンジンドリルにより脛骨に骨欠損を作製した.左側脛骨(US群)は手術24時間後から毎日15分間,1.0MHz,0.24Wを繰り返して1,2,3,4週間LIPUSの照射を行い,右側脛骨(Cont群)はLIPUSの照射を行わなかった.脛骨は,採取後三点曲げ試験,二重エネルギーエックス線法(DEXA),軟エックス線撮影,骨形態計測および組織化学的に分析を行った.軟エックス線像は手術後2,3週のCont群より,US群で骨欠損部位にわずかに新しい骨の形成がみられた.US群の脛骨は,術後2週においての三点曲げ試験でCont群の脛骨より固さが向上していたにもかかわらず,すべての実験群においてDEXA分析でCont群とUS群の間で骨密度に著明な差はみられなかった.H-E染色切片では,手術後2,3,4週のUS群の欠損部位での皮質骨の厚さは,Cont群と比較して増加していた.カルセインを使用した骨欠損範囲での骨形態計測では,US群でCont群と比較して2倍の石灰化濃度を示した.オステオポンチンを用いた免疫組織化学的染色による骨欠損部の新生骨での骨芽細胞,骨細胞の染色性は,US群とCont群で違いがみられなかった.これらの結果は,骨形成においてLIPUSが外骨膜の骨芽細胞を刺激することを示している.そして,LIPUSは皮質骨での骨形成を刺激することによって骨欠損部の治癒を促進することが示された.
- 2010-06-30
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