ミニマルインターベンションに基づく修復法の臨床応用に関する実態調査 : (第2報)MI修復法の普及を妨げている要因
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概要
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われわれは前報において,MI(ミニマルインターベンション)に基づいた歯質保存的修復法(MI修復法)の普及は,生活歯に比べ失活歯において遅れていることを示した.さらに生活歯においては,「MIの認知」と「実際の症例に対する修復法の選択」との間に正の相関があるのに対し,失活歯ではそのような相関は認められなかった.しかし,生活歯においても,MIを認知しMI修復法の適用意向も強い歯科医師で,MI修復法を選択しない回答者もあった.そこで本研究では,実際の症例に対する修復法の選択とその選択理由との関連性について,判別分析を用いて解析し,MI修復法の普及を妨げている要因について検討した.九州大学病院歯科部門に所属する歯科医師133名に対し,MIに関するアンケート調査を行った.2枚の症例写真(症例1:生活歯で遠心隣接面に限局したう蝕を有する下顎第二小臼歯,症例2:MODの実質欠損を有する根管充填直後の下顎第一大臼歯)が提示されている質問票を用い,「MIの認知」「MI修復法の適用意向」および症例1・症例2に対し選択する修復法(「実際の修復法の選択」)とその選択理由について調査した.収集したデータに対し,判別分析を実施し,MI修復法および従来型修復法を選択した回答者の選択理由の特徴を把握し,MI修復法の普及を妨げている要因について検討した.その結果,MI修復法への選好が強い回答者に比べ,従来型修復法を選択した回答者は,生活歯の場合,「二次う蝕の予防」および「保持力の確保」を,失活歯の場合,「歯・歯根の破折防止」および「保持力の確保」を選択理由として多く指摘していた.これらの結果は,MI修復法の普及を妨げている要因は,接着材料の接着性能への懸念に加え,生活歯ではMI修復法を応用した場合のう蝕罹患性,失活歯では歯・歯根破折への懸念であることを示唆するものであった.さらに判別分析の結果,失活歯の場合,「残存歯質の保存」という選択理由だけで,選択する修復法を判別できることが明らかとなった.すなわち,従来型修復法への選好が強い回答者はこの選択理由をほとんど指摘していないのに対し,MI修復法への選好が強い回答者の大半がこの選択理由を指摘していた.したがって,MI修復法の普及のためには,接着材料を応用したMI修復法の有効性に関するエビデンス,および歯の長寿化にとって残存歯質の保存が重要であることを示すエビデンスの蓄積が必要である.
- 2010-04-30
著者
-
野中 聡
旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座
-
野中 作太郎
九州電気専門学校
-
石田 芳也
北見赤十字病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
-
林 達哉
旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座
-
赤峰 昭文
九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯内疾患制御学研究分野
-
畦森 雅子
九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯内疾患制御学研究分野
-
前田 英史
九州大学病院歯内治療科
-
赤峰 昭文
九州大学病院歯内治療科
-
後藤 康治
九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯内疾患制御学研究分野
-
前田 英史
九州大学大学院歯学研究院 口膣機能修復学講座 歯内疾患制御学研究分野
-
坂井 貴子
九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座咀嚼機能制御学分野
-
松下 美樹子
九州大学病院歯内治療科
-
百武 弘登
九州大学大学院数理学研究院数理科学部門
-
齋藤 桐枝
九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯科保存学研究分野
-
椛島 浩明
九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯周疾患制御学研究分野
-
坂井 貴子
九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座咀嚼機能制御学研究分野
-
赤峰 昭文
九州大学大学院歯内疾患制御学分野
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