オオミノガ(鱗翅目,ミノガ科)における幼虫期の最終脱皮に見られる雄特異的な頭幅サイズの縮小に関する一知見
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概要
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著者は,オオミノガ雄の亜終齢幼虫期から終齢幼虫期に見られる頭幅サイズの縮小過程について,その幼虫の頭部形態の比較観察に基づき,若干の考察を行った.1995年に東京都三鷹市内で採集した若齢幼虫を東京農業大学昆虫学研究室において飼育し,材料として用いた.雄の亜終齢幼虫の脱皮殻と終齢幼虫の頭部を解剖し,観察を行った.これまで,Nishida(1983)により,雄の亜終齢幼虫期から終齢幼虫期における頭部サイズの縮小について多数の個体を用いた統計学的なデータに基づく報告がなされている.本研究では,雄の亜終齢幼虫期から終齢幼虫期にかけての頭部前面の形状を初めて図示し,比較観察を行った.その結果,雄における頭幅の縮小過程において,雄の亜終齢幼虫期と終齢幼虫期の額頭楯板(clypeofrontal plate)の幅に縮小は見られなかった.このことから雄の頭幅の縮小は,頭蓋板(epicranial plate)のサイズ縮小の結果起こることを,比較観察の結果から今回初めて明らかにした.この雄に見られる頭蓋板のサイズ縮小により,幼虫頭部の大顎から頭蓋板に引き付けられる内転筋(adductor muscles)の減少が推察された.その背景として,オオミノガの幼虫が雌雄共に最終脱皮してから蛹化まで摂食を停止する行動との関連性が示唆された.一方雌では,亜終齢幼虫期から終齢幼虫期にかけて脱皮することにより,頭幅サイズは増大し,幼虫のサイズも大きくなる.本研究では,終齢幼虫期における雌雄の幼虫のサイズに大きな性的な差が見られることを,雌雄間における頭幅サイズの縮小と発達という点から,比較観察と考察を行った.
- 2010-10-13
著者
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新津 修平
Department of Life Science, International Christian University
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新津 修平
東京都立大学大学院理学研究科
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新津 修平
理研・CDB・形態進化
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新津 修平
Department Of Life Science International Christian University
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新津 修平
首都大学東京大学院理工学研究科・生命科学コース
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