コンクリートの防蟻処理に関する研究(薬剤)
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概要
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(1)DDT,BHC,クロルデン,ヘブタクロル,ディルドリン,エンドリン,アルドリンの7種の防蟻剤の1%乳剤を混合水として作ったモルタルブロックについて殺蟻試験を行った結果,ディルドリン,エンドリン,アルドリンの3薬剤が最も優れており,約27か月屋外暴露後も大した効力の低下は認められなかった。なお,DDT,BHCは混入後,急激にその効力が低下した。(2)上記(1)と同種のテストブロックを作製後約17か月間,室内に保存した後で同一実験を行った結果,(1)同様,ディルドリン,エンドリン,アルドリンの3薬剤が最も優れており,次いでヘプタクロル,クロルデン・BHC,DDTの順であったが,BHC,DDT混入ブロックでもなおシロアリを十分殺滅するだけの殺蟻力を有していた。したがって,直接風雨にさらされない建物内部では,屋外暴露のものに比べてかなり長期間,その薬効は保持されるものと推察される。(3)0.5,1.0,1.5,3.0,5.0%のディルドリン乳剤を混合水として作製したテストブロックについて,作製後約25か月(室内保存)経過後にその殺蟻効力を調べた結果,1.5%以上に濃度を高めてもその割に殺蟻効力は大して高まらないので,混入薬剤の濃度は0.5〜1.0%程度で十分であると考えられる。なお,適正濃度についてはさらに追究していく必要がある。(4)ディルドリン,エンドリン,アルドリンの1%と3%乳剤を無処理ブロックの表面に塗布した場合でも,約11か月間室内保存後にいずれも十分な殺蟻効力が保持されていた。(5)いずれの供試薬剤に対しても,兵蟻の方が職蟻より抵抗性が弱く,より早く転倒,死亡する傾向が認められた。(6)ディルドリン,エンドリン,アルドリンの0.5%と1.0%乳剤を混合水としたコンクリートのスランプ値は,いずれも無処理コンクリートのものより小さかったが,そのうちアルドリンが最もスランプの低下が少なかった。(7)上記(6)と同種のコンクリートによる供試体(直径5cm,高さ10cm)について圧縮強度試験を行った結果,薬剤混入ブロックはいずれも無処理ブロックに比べて圧縮強度は低く,0.5%より1.0%乳剤を用いたものの方が強度の低下は大きかった。薬剤混入による圧縮強度の低下は,アルドリンが最も小さく,無処理区に対する圧縮強度率は,材令7〜84日のもので,0.5%乳剤の場合81.6〜89.1%,1.0%では69.8〜86.8%で,材令を経るに従って圧縮強度率は次第に高くなる傾向が認められた。(8)殺蟻効果とコンクリートの圧縮強度の低下に及ぼす影響から考えて,本実験に用いた7種の防蟻剤のうちでは,ドリン乳剤,特にアルドリン乳剤がコンクリート混入薬剤としては最も望ましいと考えられる。しかし,今後は人体に対する毒性や公害問題など安全性の点からも十分考慮して,総合的な観点から薬剤によるコンクリートの防蟻処理を考えていく必要がある。
- 1980-06-30
著者
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