日本産Arichanna属2種の交尾器の記載とIcterodes亜属の雄交尾器筋肉系と亜属の分類学上のコメント
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概要
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Arichanna属は,5亜属,約90種の記載種からなる大きな群であり,主に東南アジアに分布している.日本からは5種が知られ, A. tetrica (Butler)キジマエダシャク, A. pryeraria Leechプライヤエダシャク, A. albomacularia Leechシロホシエダシャクの3種はArichanna亜属に, A. melanaria (Linnaeus)キシタエダシャクとA. jaguararia (Guenee)ヒョウモンエダシャクの2種はIcterodes亜属に属する.本論文では, Icterodes亜属に属する2種の交尾器の記載を行った.さらに, Icterodes亜属の雄交尾器筋肉系を記載し,亜属の分類学上のコメントを記した. Icterodes亜属の雄交尾器筋肉系は,エダシャク亜科のBoarmia groupの筋肉系と基本的に同一であり,筋肉m.4の付着部位がvinculumからtegumenに, m.5の付着部位がvalvaのsacculusからjuxtaに移動するという特徴が観察された. Icterodes亜属は雌雄交尾器の形質において, Epicterodes亜属に近縁であるが,雄交尾器のharpeが強く硬化しないことにより,Epicterodes亜属から区別される. Arichanna亜属からは,硬化の程度が弱く細長いsacculusにより, Phyllabraxas亜属とParicterodes亜属からは,コブ状のampullaを持つことにより,それぞれ区別される. Icterodes亜属に属する日本産2種の雄交尾器は互いに似ているが,雌交尾器ではかなりの違いが見られた.しかも,雄交尾器に見られる類似は,本亜属の固有新形質ではないと考えられ,本亜属が単系統群であるかどうかは疑問である.
- 1992-06-30