マルモンシャチホコの学名
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概要
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マルモンシャチホコは,北海道南部から九州に至る山地に分布し,とくにブナ林に多く,幼虫もブナ,イヌブナを食樹とすることが判明している.この蛾は,当初秩父,碓氷峠,熊ノ平の標本によってMesodonta rotundata MATSUMURA, 1920,と命名されたが,のちにこの名は'満州'から記載されたNotodonta moltrecht OBERTHUR, 1911,の異名とされた.しかし,本種の食樹がブナ属(Fagus)であることが判明して以来,この植物を欠く沿海州や中国東北部に同種の蛾を産することに合理的な説明を欠いていたが,昨1990年夏,沿海州における採集調査の折に,moltrechtiの雌雄の標本を得ることができ,比較した結果moltrechtiとrotundataは明らかに別種であることが判ったので,交尾器の図を示して両種の相異点を述べた.この結果,マルモンシャチホコは,ブナ属を食樹する他の5-6種のシャチホコガ科同様日本の固有種とみなされることになる,東アジアにおいて,ブナ属は日本のほかに中国の中部に分布するが,日本のブナ科食の鱗翅類との対応関係について,現状では何の資料もない.東アジアの」Perideaの各種は,成虫,幼虫ともに安定したまとまりをもつ自然群であるが,P. basilinea (WILEMAN)ネスジシャチホコだけは,形態的に異質であって,やはりPerideaから分離することが相当である.この種は,中国から記載されたPheosilla umbra KIRIAKOFF, 1963,と同属関係にあると考えられるので,それぞれを模式種とする2つの属名Fusadonta MATSUMURA, 1920,およびPheosilla KIRIAKOFF, 1963,を主観的シノニムとして扱うことになる.従つてネスジシャチホコの学名は,Fusadonta basilinea (WILEMAN), comb. rev.として扱うべきである.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1991-12-20
日本鱗翅学会 | 論文
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