カラスアゲハとその近縁種間のタンパクレベルより解析した分化
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概要
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東南アジアに生息するカラスアゲハ集団中には多量の遺伝的変異が保有されており,これらは特に隔離された島小集団においては遺伝的浮動と相まって種分化が進んでいることが期待される.この問題の一端を調べるために,台湾産,石垣島産,沖縄本島産,本州産の各亜種カラスアゲハ雄20匹ずつを採集し,腹部を擦り潰した全上澄みタンパクをSDS-PAGEおよび二次元電気泳動で解析した.合計のバンド数に占める異なったバンドの割合を非類似度指数(DI)として定量化すると,亜種内では,0.020, 0.019, 0.015, 0.015であり,対照区にとったミヤマカラスアゲハ内では0.014であった.他方,台湾産と石垣島産亜種間では0.212,沖縄本島産,本州産との間では,0.148, 0.128であった.石垣島産と,沖縄本島産,本州産では0.160, 0.116であり,また沖縄本島産と本州産では0,155であった.これらの値は,別種であるミヤマカラスアゲハとの間のDI,すなわち0.145, 0.128, 0.102, 0.178と殆ど同程度であり,これらの亜種間で分化が種のレベルまで進んでいる事を示し,遺伝的距離から推定した結果と良く一致している.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1991-05-20
著者
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住吉 薫
Departments Of Biology And Applied Physiology Hyogo University Of Teacher Education
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山口 修
Departments Of Biology And Applied Physiology Hyogo University Of Teacher Education
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笠原 恵
Departments Of Biology And Applied Physiology Hyogo University Of Teacher Education:(present Address
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小南 裕彦
Departments of Biology and Applied Physiology, Hyogo University of Teacher Education
-
小南 裕彦
Departments Of Biology And Applied Physiology Hyogo University Of Teacher Education
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