A List of the Butterflies of Haeterinae and Biinae (Lepidoptera: Satyridae) Collected by two Japanese Expeditions in Colombia and Peru, South America
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概要
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筆者は,"第1次静岡大学コロンビア・アンデス学術調査,1967"(静岡大学理学部・静岡大学山岳会)および"第1次奥アマゾン調査"(日本アンデス会議・共同通信社)に参加したが,そのときに採集したジャノメチョウ科のスカシジャノメ亜科Haeterinae(11種)とオナガコノマチョウ亜科Biinae(2種)の記録を報告する.この中には,コロンビア在住のレオポルド・リヒター博士(Dr. L. RICHTER).が1972年にコロンビア南端部のコトウエ川(Rio Cotuhe)で採集された数頭の標本のデータも含まれている.調査した場所は,ペルーのディンゴ・マリア(Tingo Maria)を除いては,いずれもコロンビア領に属し,コロンビア北部のサンタ・マルタ山地(Sierra Nevada de Santa Marta),大平洋岸のキブド市(Quibdo)に近いラ・トゥロへ(La Troje),その南側のサバレタス(Zabaletas),カリマ川の下流(Bajo Calima)付近などブエナヴェントゥーラ(Buenaventura)市の周辺,カウカ川に沿うラ・ピンターダ(La Pintada),東コルディエラ山脈(Cordillera Oriehtal)の山麓の小都市フロレンシア(Florencia)に近いサン・ホセ(San Jose),コロンビア南端部のアマゾン河に沿うレティシア(Leticia),それにペルーのウアジャガ川(Rio Huallaga)に沿うティンゴ・マリアである.これらのうち,すくなくとも,サンタ・マルタ山地,ラ・トゥロへ,サン・ホセなどのスカシジャノメ亜科とオナガコノマチョウ亜科に関しては,まだ発表されたことがないので,ここに発表されたこれらの地域に関するデータは,分布上の新知見といえよう.上記の地域の中で,これらの蝶がもっとも豊富に見られたのは,サン・ホセ付近の熱帯降雨林である.このサン・ホセというところは,ちょうどアンデスの一部・東コルディエラ山脈がアマゾンの大平原と接する位置にあり,大部分は牧場になっているが,ところどころに残されている熱帯降雨林には,おどろくほどのスカシジャノメ亜科の蝶が見られることがある.ここでは1973年8月26日から27日かけて,計6種21頭の個体を採集することができた.同地ではさらにオナガコノマチョウ亜科に属するもの1種1頭を採集した,この両亜科の蝶は,いずれも南米の熱帯降雨林の林床にすむもっとも代表的なものである.スカシジャノメ類は,林床の地表すれすれの低いところを活発に飛びまわり,ときどき地表や下生えの葉上に翅を半ば開いた状態で静止するが,感覚は鋭敏で,人の気配を感じるとすぐ飛びたち,下生えの内部をくぐるようにして飛び去る習性がある.CithaeriasやHaeteraに属するものは,翅の大部分が透明で,うす暗い熱帯降雨林の内部では,後翅の赤色斑や黄色斑のみがよく目立つ.食草は未知であるが,おそらくイネ科の草本ではなく,ヤシ科そのほかの林床性の単子葉植物ではないかと思われる.このリストに含まれる13種の中でもっとも注目されるものは,Pierella hortona HEWITSONである,この種は属Pierellaの中でも比較的まれな種であり,エクアドルのアマゾン地域から原名亜種hortona HEWITSONが,ブラジル北西部のネグロ川Rio Negro流域から亜種hortansia C. et. R. FELDERが知られている.このリストの中に含まれているものは,筆者がサンホセで採集した1♂1♀と,リヒター博士がコトウエ川で採集された1♂であるが,これらは原名亜種hortonaに比べて,雌雄ともに前翅中室端の青紫色斑が小さく,またその外縁部が直線的になり,その青紫色斑は原名亜種のように楕円形にならずに半月形となる.また,後翅の青紫色斑の位置は,亜種hortensiaのように内側にずれることがなく,原名亜種と大差がない.おそらくコロンビア南部に分布する新亜種に相当するものと思われるが,材料が十分でなく,変異の傾向も明らかでないので,ここでは新亜種としての記載を保留する.
- 1981-09-20