The Horaga albimacula Complex (Lepidoptera, Lycaenidae)
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概要
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ヒメミツオシジミHoraga albimacula(WOOD MASON & de NICEVILLE)はCOWAN(1966)によって12亜種に整理されたが,それらのうち林(1984)によって独立種に戻されたH.bilineata SEMPER以外の11亜種は,スンダランドで分布の重なっている2つの同胞種,すなわちH.albimacula(WOOD MASON & de NICEVILLE)とH.chalcedonyx FRUHSTORFERとから成っていることが判明した.両者には雄交尾器に多くの安定した差異が認められるが,H.chalcedonyxには以下のような特色がある.uncus lobesは二等辺三角形.左右非対称のbrachiaはH.albimaculaのものに比し一層長く,かつ右側のbrachiumの扁平な末端部も長い.vinculumの側面(前後縁)は平行に近い.valvaはより一様な先細で,末端の突出部は短い.phallusの内膜には微歯群を欠く.外見からこれらの2種を判断することは不可能と思われる.前翅の白斑は大きさが産地により変化し,両種が混飛している所ではH.chalcedonyxの方が大きくて区別の手助けになるが,全分布域での種の区別には使えない.H.chalcedonyxの翅表はスラウェシでは暗褐色(ここではH.albimaculaは未発見)であるが,他の地域の亜種には青色部がある.H.albimaculaの翅表は次のようである.アンダマンの基亜種では♂♀共前翅褐色,後翅は外縁をのぞき暗青紫色.ニアス産ssp.ohkuboi HAYASHIの♂では両翅基部に青色域がある.それ以外の広い分布域では♂は常に暗褐色である.♀は大へん稀なようで,筆者が検した50以上の標本中2個体あったに過ぎない.うち1頭は基亜種(翅表は上に記した通り).他の1頭はシッキム産のssp. viola MOOREで,翅表は一様に褐色である.COWANはviolaの♀が時に青鱗の小斑をもつと述べているが,これは大英博物館のviolaの標本シリーズに寸づまりの1♂やすすけたミツオシジミH.onyx onyxの6♀♀が混入されていたことによるものであろう.COWANの記した♀のうちその他の腹部のない標本は,前脚〓節や下唇髪を調べてみると実は♂であった.台湾産のssp. triumphalis MURAYAMA & SIBATANIの♀は白水(1960)によれば翅底に青色部がある.ssp. violaは地理的に幾分変異がある.北西ヒマラヤ山麓の基亜種(川副註:基産地はカングラKangra地方のダールムサラDharmsala)では前翅白斑の大きさは中程度であるが,シッキムからラングーンにかけてでは平均して小さくなる.しかし,かけ離れた分布地である南インドのものでは白斑は最も大きく,大英博物館所蔵の6頭中4頭ではそれが淡燈色に縁取られていて他の分布地では見られない特色となっており,別亜種としてよいかも知れない.大陸に広く分布するH.albimaculaはその共通の祖先から発展して後に分布をスンダランドーパラワンや小スンダ列島にまで拡大し,他方H.chalcedonyxはスンダランドで進化して僅かにスラウェシへ拡がったに過ぎないものと思われる.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1986-01-30
日本鱗翅学会 | 論文
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