アマミトガリバ属の再検討
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概要
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アマミトガリバ属,Neochropacha INOUE, 1982,は台湾台南縣の関仔嶺より記載されたPolyploca aenea WILEMAN, 1911,に対して設けられたが,最近私は台湾中部の埔里より新属新種として記載されたHoripsestis teikichiana MATSUMURA, 1933,テイキチトガリバがP.aeneaと同種であることを知ったので,両者の異名関係を示すとともに,属Neochropachaを属Horipsestisのシノニムとして整理した.一方,INOUE(1976)によりaeneaのシノニムとされたPalimpsestis mushana MATSUMURA, 1931,ムシャトガリバは,雌雄交尾器の形状などからaeneaとは別種であることが判ったので,これを復活し属Horipsestisに移した.なお,アマミトガリバとして奄美大島から記録されたものは,aeneaではなくmushanaの方である. Horipsestis MATSUMURA, 1933.模式種:Horipsestis teikichiana MATSUMURA, 1933=Polyploca aenea WILEMAN, 1911. Neochropacha INOUE, 1982.模式種:Polyploca aenea WILEMAN, 1911, syn. nov.小型〜中型種を含む.♂交尾器は比較的単純だが,transtillaがよく発達すること,anellus下部に骨化した半球状の構造をもつことなどで特徴づけられる,また,上述の2種では♂の第8腹節腹板に1対の小孔を有する.本報ではこれら2種の他,中国産の1小型種も本属に移した.なお,今後の混乱を避けるために,台湾および本邦の2種の和名を新たに提出したい. Horipsestis aenea(WILEMAN, 1911), comb. nov.ネジロアマミトガリバ(改称)=テイキチトガリバ・アマミトガリバ Horipsestis teikichiana MATSUMURA, 1933, syn. nov. 前翅基部は広く淡色,時に淡く桃色を帯びる.中室基部の小黒点は明瞭,内横線はゆるやかに湾曲する.外横線と亜外縁線の間の波線は一般に明瞭.この線の前縁起始部の暗色影は亜外縁線起始部内側の暗色影と融合しない.♂交尾器:juxtaは大きくよく骨化し,aedeagusには屈曲した棒状の突起をそなえ,vesicaに小棘群を発達させる.♀交尾器:ostium bursaeはよく発達し深く陥入してカップ状を呈する.本種は現状では台湾の特産.1000m前後の山地に普通で,3〜8月まで得られる.Horipsestis mushana (MATSUMURA, 1931), sp. rev. et comb. nov.ハスオビアマミトガリバ(改称)=ムシャトガリバ 中室基部に小黒点を欠くか,あっても不明瞭.内横線はほぼ直線的に斜走し,その内側の屈曲した黒線は一般に明瞭で,前種のように前半で途切れることは少ない.外横線と亜外縁線の間の波線は明瞭でないことが多く,前縁起始部の暗色影はその外の暗色影と融合し,楔状の暗色斑を作る.♂交尾器:aedeagus後端部の突起は桿状だが骨化は弱く,vesica基方は小顆粒で被われる.♀交尾器:ostium bursaeは膜質,広く開口する.本種は台湾では前種同様1000m前後の山地に普通に産し,3〜8月に出現する.本邦では奄美大島で4月に♂1頭が得られており,この標本は前種の名のもとに講談社発行の蛾類大図鑑でも原色で図示された(2巻:pl.228,f.44). Horipsesis minuta(FORBES,1936), comb. nov. 実物は検していない.記載によると開張18-24mmと小型(前2種では開張33-40mm)で,比較的顕著な斑紋を持つことなど,前2種との関係に疑問もあるが,FORBESによる♂交尾器の記載と図は本属との強い関連を示しており本報で取り扱うこととした.後翅Sc+R_1脈とR_2脈は,本種では一部融着するが,これらの脈の同属内での変異はホシボシトガリバ属Demopsestisでも見い出されている(YOSHIMOTO, 1983a). 分布:中国四川省.
- 1984-07-20
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