鱗翅類の蛹前翅気管系
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概要
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現生鱗翅類の蛹前翅気管系は,5本の幹気管から分枝する15本前後の気管から成るとされている.このうち径脈と中脈とは,種によって分枝の形式が殊に著しく変化する.日本産鱗翅類44科についてこの変化を調べ,径脈では理論的に14の形式がありうること,日本産の種では,そのうち11の形式が認められたこと,中脈には2形式があり,3本の中脈の分枝点における彎曲の仕方で成虫翅脈におけるtrifidとquadrindの違いが生ずること等が明らかにされた,3本の臀脈は1本の幹気管から派生するのではなく,まず1Aと2A+3Aとが分れ,その後2Aと3Aとが分れるので,これらは正しくはA_1,A_<2a>,A_<2b>と呼ぶべきであろう.ヒロヘリアオイラガLatoia lepida CRAMER等の蛹前翅気管系の観察からみて,これらの気管は幹気管から分枝するものではなく,元来はすべて肩部から発し,5組の束になって走り,途中から1本ずつ遊離するものであったと推定される.蛹翅の気管系の形式は,既に幼虫の翅芽形成期に決定されていることが知られている.成虫翅脈の形式も少くとも蛹化時には決定されていると考えられるので,蛹翅の気管系は蛹期末に翅脈が形成される際に,次第に変化していくものではなく,既定の筋書に沿って翅脈中に嵌合していくものとみなすべきであろう.中脈で気管の基部が消失し,末端のみ活きているとみるのは,いかにも不自然であるので,気管は翅脈が形成される過程で翅脈管中に挿入され,それと共に役割が振替わるものと考えられる.前記の中脈における2つの形式は,蝶を除き多くの場合,同一個体の前,後翅において異っていることは興味あることである.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1984-05-20
日本鱗翅学会 | 論文
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