フタグロマダラメイガEurhodope dichromella(RAGONOT)と近縁の2新種の記載と既知種について
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概要
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Eurhodope pseudodichromella YAMANAKA, sp. nov.コフタグロマダラメイガ(新称) 本種はフタグロマダラメイガEurhodope dischromella(RAGONOT)によく似るが,外観上は内横線がフタグロマダラメイガのように屈曲せずになめらかに湾曲していること,また雄の交尾器ではtranstillaの中央部の切れ込みがフタグロマダラメイガより一層深いことなどで区別できる.しかし雌の交尾器では区別することが困難である.北海道(利尻島),新潟,長野,富山,群馬,埼玉,東京(高尾山),神奈川,静岡,四国(香川),九州(福岡)から採集された標本にもとついて記載した.平地から山地にかけて分布し,5月から8月に採集されている.Eurhodope paradichromella YAMANAKA, sp. nov.オオフタグロマダラメイガ(新称) フタグロマダラメイガに酷似する,外観上は亜外縁線が脈M_1とCu_2の間でフタグロ・マダラメイガよりやや強く外方に湾曲するが,これだけによって区別することは困難である.雄交尾器ではuncusは幅広く舌状,gnathosは細く,やや強く骨化し,またtranstillaが非常によく発達しているので,フタグロマダラメイガとの区別は容易である.雌交尾器のsignumは同心円上にほぼ規則正しく配列された太い棘状突起群よりなるが,フタグロマダラメイガの各棘状突起の先端はやや尖るのに対し,本種は鈍化しているので区別できる.九州(鹿児島県)で5月,本州(富山県)で8月に採集された標本にもとついて記載したが,正確な分布範囲や発生期はよくわからない.本種はフタグロマダラメイガと酷似しているので,おそらく,いままで両種は混同されていたものと考えられる.Eurhodope hollandella(RAGONOT)ウストビネマダラメイガ(改称)本種はRAGONOT(1893)によってわが国から記載されたものであるが,その後LEECH(1901),松村(1905),渋谷(1932)らによって紹介されていた.しかしこれらの報文中には蛾の記載がなく,いままでその正体がわからなかった.しかし筆者は1975年MUNROE、六浦両博士のご厚意でCarnegie Museum所蔵のタイプ標本を調べることができ,本種の特微を知ることができた.その結果,六浦(1957,1971,原色日本蛾類図鑑上巻:98,pl.17,fig.531),井上(1959,原色日本昆虫図鑑1:237,Pl.166,fig.35)らによってトビネマダラメイガNephopteryx formosa HAWORTHとして図説されている種が本種に該当することが判明した.N.formosa HAWORTHは中央ヨーロッパおよびイギリスに分布する種で,渋谷(1927,Ins. mats.,2:124)によってわが国から初めて記録されているが(産地:北海道札幌),筆者は渋谷の報告した種が真のformosa HAWORTHかどうか,またこの種がわが国に分布しているかどうかなどについてまだ確認していない.なお,六浦(前出:101,pl.18,fig.548),井上(前出:240,pl.167,fig.30)らによってナシハマキマダラメイガEurhodope hollandella (RAGONOT)として図説されている種は渋谷(1928,Ins. mats., 2:122)が北海道札幌で採集された標本にもとついて記載したイタヤマダラメイガEtielloides curvellaに該当する.従来hollandellaの和名は上記のようにナシハマキマダラメイガとよばれていたが,真のhollandellaはナシにはつかないので本種の和名をウストビネマダラメイガと改めた.Assara funerellum(RAGONOT)フタスジマダラメイガ 本種はRAGONOT(1901)によってわが国から記載されて以来まったく正体が不明であったが,筆者は1975年MUNROE,六浦両博士のご厚意でCarnegie Museum所蔵のタイプ標本を調べる機会を得,本種を正しく同定することができた,その結果ROESLER(1973,Microlep. Palaearc.,4:150,pl.6,fig.53,pl.50,fig.53,pl.106,fig.53)が中国および日本に分布するとした種Assara exiguella(CARADJA, 1926)(中国の上海から記載),が本種と一致することが判明した.またROESLER(前出)は井上(1959,Tinea,Tokyo,5:293,fig.1,fig.2)がわが国から記載したHomoeosoma albocostellaをexiguellaのシノニムとしているので,筆者は井上博士よりHomoeosoma albocostellaのタイプ標本を借用し比較検討した結果,albocostellaも本種とまったく同じものであることを確認することができた.従って,ここではCARADJAが記載したAssara exiguellaおよび井上が記載したHomoeosoma albocostellaをAssara funerellum(RAGONOT)のシノニムとした.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1980-08-20
日本鱗翅学会 | 論文
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