The effect of Photoperiod on the Dimorphism of the Lemon Migrant, Catopsilia pomona FABRICIUS
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概要
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ギンモンウスキチョウCatopsille pomona FABRICIUSとムモンウスキチョウC. crocale CRAMERが同種か別種かについては長い間意見がわかれていたが,D'ABRERA (1971)や内藤・今村(1976)の飼育・観察により,これらが同一種の異なる表現型にすぎないことが実証された.しかし,この2つの型が遣伝的な多型なのかそれとも非遺伝的なものなのか,そしてもし後者だとすればその決定要因は何なのかという点に関してはまだ解明されていない.筆者らはこの点を明らかにするために本種の光周反応を実験的に調べてみた.材料はすべて沖縄県知念村において,1977年6〜7月に採集されたものである.実験は福岡の九州大学教養部生物学教室で行なったため,材料および食草は沖縄から空輸のものを使用,幼虫の飼育は20±1℃恒温,日長10〜15時間の条件下で行なわれた.最初の予備的な実験では野外でランダムに採集された幼虫(2〜4令)を用いたため,それらの母蝶の由来は全く不明である.しかし10時間日長区ではほぼ100%のギンモン型が生じ,13,14時間区では全くギンモン型は得られず,ムモン型および中間型が生じた.次の本実験では1頭のギンモン型♀から人工採卵した卵を用い,採卵直後からただちに光周処理を行なった。その結果は予備実験とほとんど一致し,10,11時間日長区では100%ギンモン型,12時間区では中間型,13,14時間ではムモン型が得られた.ただし,15時間日長区で羽化した1頭はギンモン型であった.一方,幼虫の発育期間は各日長区ともほとんど差異がなく,平均19日であった。本実験で得られた未交尾♀成虫を20±1℃,14時間日長の条件下で飼育し,羽化後4日目に卵巣を解剖した結果,ムモン型ではかなり卵巣の発達がすすんでいたが,ギンモン型はほとんど未発達であった.福田・田中(1977)による沖縄県南部における本種の採集・目撃データーをもとに,両型の発生消長と自然日長の変化との関連性を検討した結果,日長が12時間以下の短日期(11〜2月)にはギンモン型の比率が高く,日長が12時間以上の長日期(5〜10月)には逆にムモン型の比率が高いことがみいだされた。これらの観察結果と筆者らの得た実験結果から判断すると,少なくとも本種の分布限界にあたる高緯度地域では,型決定の主要因は幼虫期の日長であろうと考えられる.また,ギンモン型の卵巣発育に遅延がみられることから,本種の多型現象はキチョウでみられた季節的多型とかなり類似した性格をもち,従って福田ら(1977)が指摘したようにギンモン型は成虫休眠型,ムモン型は非休眠型を代表しているように考えられる.しかし一方,熱帯を中心とした低緯度地域では季節的多型の性格よりもむしろ相変異的な性格をあらわすょうに思われる.この,点を示唆する事実として,熱帯地域では本種の卵や幼虫がしばしば著しい高密度となり,Cassia属の木に大害を与えることが挙げられる.
- 1979-07-20
著者
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Yata Osamu
Biological Laboratory College Of General Education Kyushu University
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TANAKA Hiroshi
Maternal and Child Health Laboratory, Health Science College, University of the Ryukyus
-
Tanaka Hiroshi
Maternal And Child Health Laboratory Health Science College University Of The Ryukyus
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