日本の第四紀とチョウの生物地理
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概要
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複雑多様な生物的自然を理解するには,多様性を産みだした歴史について考える必要がある.主体者としての生物の歴史,環境の歴史,および生物と環境の関係の歴史である.悠久な地質時代の最近の約200万年は,第四紀とよばれている.この時代は,単にもっとも現在に近い時代,というだけでなく,現在みられる白然の性格をつくるのに決定的な影響を与えた時代だ,といわれている.第四紀の日本の白然を可能なかぎり復元し,その復元像から現在を照射するならば,自然の理解が深まり,これまで看過されてきた間題点を掘り起こしたり,行き詰まっていた解決の緒口が見つかる可能性がある.第四紀の復元は,当然第四紀地質学をはじめ,直接過去の資料をとり扱う科学が中心になってなされるものであるが,生物的自然については化石産出の制約(化石研究の遅れもある)があって,現生生物の資料から推定して補強せざるを得ない面が広い.現在から過去を推定することは,推定の誤りを犯す危険をつねに伴う.また,現在から過去を推定し,その過去から再び現在を検討することは,循環論におち入る危険をはらむものである.日本の第四紀像の復元はウルム氷期以降(約7万年前以降)について作業が始まったばかり,という段階である.それ故,ここでは現在からウルム氷期以降の過去を復元する作業を紹介し,その過程で発見された日本の蝶の問題点の指摘を中心に述べることにする.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1977-12-01
著者
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