蝶類の個体群構造に関する研究 : 1.クジャクチョウ・キタテハ・ルリタテハの3種におけるナワバリの構造と機能
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1. ナワバリの定義としては"防衛された地域(Noble, 1939)"を用いる.ナワバリを持つことによって動物の通常の社会生活に,ある種の調整が保たれている場合,これをナワバリ制と呼ぶ(伊藤,1966). 2. 行動圏を"ある時間内における,個体または集団の平常の行動範囲" と定義する.3. 行動圏あるいはナワバリ内における行動の解析方法として,(1)Observation-area curve (Odum & Kuenzler,1955) (2)Activity radius (Dice & Clark,1952) (3)移動距離(displacement range)を提示した. 4. 1973年4月8日には,キタテハの行動圏(22.2m^2)とクジャクチョウの行動圏(11.7m^2)の重複した例が観察され,両者の防衛行動からキタテハの種内ナワバリの中にクジャクチョウの種間ナワバリが形成されていたと考えられた.4月9日には,クジャクチョウの種間ナワバリが形成され,その面積は行動圏(130.4m^2)の中の63.7m^2であった. 5. 1973年8月31日には,ルリタテハの餌場を中心としたナワバリが形成された.行動圏の面積は31.9m^2であったが,ナワバリはその中の餌場の周囲0.28m^2の非常に狭い範囲に限られていた.6. Scott(1974a)は,蝶類にはナワバリが存在しないと述べた.しかし,ある時間内一定の地域への執着が確認され,同時に一定範囲から他個体を追い払う反発行動によって,占有個体を中心とした他個体の侵入できないような空間が存在することから,少なくとも一部の種の一部の個体はナワバリを占有していたと考えられる.7. 蝶類の行動圏あるいはナワバリ内における基本的行動様式は,一個〜数個の静止場所を中心として,周囲に向けて自発的な旋回飛翔やchasingのための飛翔等を行うもので,その活動は「静止型」と「旋回型」とに大別される.8. 蝶類のナワバリには,伊藤(1966)の指摘した動物のナワバリの3大要因の内の2要因である配偶と食物とに関連した2種類のナワバリが存在することが考えられた.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1977-09-01
日本鱗翅学会 | 論文
- オオルリシジミの発生に及ぼす放牧圧の影響
- 日本鱗翅学会60年史(上) : 1945(昭和20年)〜1966(昭和41年)
- 緒方さんの思い出(緒方正美先生追悼特集)
- 私と鱗翅学会50年(日本鱗翅学会50周年特集(1))
- 「やどりが」誕生のころ(世界に躍進する日本鱗翅学会)