ガンマ線遮蔽壁のダクト・スリット部における遮蔽性能の低下を補う補償遮蔽の研究
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概要
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遮蔽壁にスリット・ダクト等の不規則形状部がある場合、その遮蔽性能は一般にバルク遮蔽壁でのそれより劣る。本論文は、ガンマ線遮蔽用コンクリート壁に設けられる代表的な不規則形状部である直ダクト、直スリット、斜ダクト、斜スリット、オフセットスリットおよび段付き円柱プラグについて、こわらの不規則形状部による遮蔽性能の低下を補い、コンクリート壁厚を変えることなしに壁背面の線量率をバルク遮蔽壁での値と同程度にさせるための壁内に組み込む鉄製補償遮蔽体の設計手法を提案した。本手法の特徴は、補償遮蔽体の形状を、入射ガンマ線のエネルギーには依存せず、コンクリートと鉄の密度、間隙幅、ダクト直径および遮蔽壁厚に基づいて定める,点にある。また、本研究によって、1 回散乱コードG33-GP は不規則形状部付き遮蔽壁の解析に有力な手法であることが明らかにされた。したがって、本設計手法による補償遮蔽構造と異なる構造を採用する場合は、同コードによってその遮蔽性能を求めることができる。本研究で得られた成果はホットラボ施設、再処理施設、原子炉施設の遮蔽壁接合部やダクトの遮蔽設計に役立てられる。即ち、ホットラボ施設や再処理施設では、遮蔽壁の表面に凹凸がないこと、遮蔽壁付近に機器の設置が容易であることと、不規則形状部付き遮蔽壁の遮蔽性能をバルク遮蔽壁と同程度にするとともに遮蔽壁の厚さの増加を抑えることが要求され、原子炉施設においても舶用炉のように船内の狭隆な場所に遮蔽壁が設けられる場合は上記の条件が要求されるからである。また、従来は線源となる機器の配置設計やダクト・スリットの配置設計において、放射線ストリーミングを極力抑えるように線源となる機器とダクト・スリットを離すため、ダクト等の設置場所が限定され、多数のダクトが近接して配置されることによる近接効果が生じて遮蔽解析が複雑となる場合も見られるが、本手法を用いることにより配置場所の制限が緩和され、遮蔽設計および線源となる機器の配置設計やダクト・スリットの配置設計が容易となる。また、線源が大きい体積を有する場合は、線源の一部がダクトやスリットの出口を直視する配置においても、不規則形状部出口の線量率をバルク遮蔽壁のそれに等しくすることが可能であり、廃棄物貯蔵施設のように大きい体積の線源を扱う施設の遮蔽設計にも本手法は役立てられる。本論文は12の章と2つの附録、等から構成される。各章と附録の要旨は次の通りである。
- 独立行政法人 海上技術安全研究所の論文
- 1989-11-30
著者
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