脳死患者における人工呼吸器の中止 : 救急医に対する質的研究
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概要
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脳死臓器移植に関わらない脳死患者において人工呼吸器の中止が臨床上の選択肢とされているか否か、及び、その意思決定に関連する要因を明らかにするため、国内の救急医35名を対象とする探索的なインタビュー調査を行った。データ収集と分析にはgrounded theory approachの手法を採用した。その結果、人工呼吸器の中止を選択肢としていない医師がほとんどであり、その選択肢を考慮させない要因群として、1)脳死の二重基準などによる脳死ドナー以外における脳死の法的・臨床的意味の曖昧さ、2)医師側の心理的障壁、3)治療継続の目的は家族ケアという医師の認識、4)間近に心停止が予測されているため人工呼吸器の中止は不要という医師の認識、があることが示された。一方、人工呼吸器の中止を通常の選択肢としている医師は3名おり、彼らは共通して、脳死の理解が一様でない我が国において、脳死の二重基準は家族の受容を援助するために有用であると、自らの実践を通して認識していた。脳死の二重基準は非論理的ではあるが、我が国おいては臨床上の有用性を有することが示された。
- 2008-09-21
著者
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会田 薫子
東京大学大学院医学系研究科
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会田 薫子
東京大学大学院人文社会系研究科グローバルcoeプログラム
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会田 薫子
元ジャパンタイムズ報道部
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会田 薫子
東京大学大学院人文社会系研究科グローバルcoe「死生学の展開と組織化」
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