シジミチョウ科蝶類における色彩パターン修飾と種分化
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概要
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蛋白質チロシン・ホスファターゼ阻害剤であるタングステン酸ナトリウムを蛹化直後の蛹に注射すると,翅の色彩パターン修飾が見られることがヒメアカタテハにおいて示されている.これは,鱗粉細胞において,受容体型蛋白質チロシン・キナーゼによって開始される細胞内情報伝達経路が長時間活性化されることに起因すると考えられる.この論文では,ベニシジミを用いて同様の実験を行った.黒斑が縮小・消滅するヒメアカタテハとは対照的に,ベニシジミでは特に前翅裏面の黒斑列が拡大した.このような修飾は,ベニシジミばかりでなく,クロツバメシジミやヤマトシジミなど多くのシジミチョウ科蝶類においても野外で頻繁に観察されている.正常な日本の蝶の色彩パターンにおいても同様の傾向が観察された.小さな黒斑を持つゴマシジミと細長く大きな黒斑を持つオオゴマシジミとの相違はその最も顕著な例である.このような知見は,少なくともシジミチョウ科蝶類では,鱗粉細胞の分化に関わる仮説的な細胞内情報伝達経路の修飾が種分化に深く関連していることを示している.
- 2003-09-30
著者
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大瀧 丈二
Department of Biological Sciences, Kanagawa University
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山本 晴彦
Department of Biological Sciences, Kanagawa University
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山本 晴彦
Department Of Biological Sciences Faculty Of Science Kanagawa University
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大瀧 丈二
Department Of Biological Sciences Faculty Of Science Kanagawa University:present Address: Department
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