北海道におけるウスバシロチョウ・ヒメウスバシロチョウ種間雑種の母親種の分子生物学的方法による同定
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概要
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北海道中央部のウスバシロチョウ・ヒメウスバシロチョウ混棲地には両種の中間的な淡黄色(ウスバシロチョウ橙色,ヒメウスバシロチョウ灰色)の体毛を持つ個体が10-25%存在することが知られる.北原・川田の精力的な研究によれば,両種のハンドペアリングによる人工交雑はメスのウスバシロチョウとオスのヒメウスバシロチョウとの間でのみ容易に成立し,その雑種第一代は正常に発育して,淡黄色の体毛を持つ成虫となる.このことから混棲地における淡黄色体毛を持つ個体は両種の自然交雑体であると推測されてきた.我々はミトコンドリアの母系遺伝を利用して,混棲地で採集された淡黄色体毛を持つ個体の母親種がウスバシロチョウかヒメウスバシロチョウかどちらであるか知ることを試みた.その結果,調べた5個体全てのミトコンドリアDNAの塩基配列はウスバシロチョウのものと一致し,それらの母親はウスバシロチョウであることがわかった.この結果と北原・川田らの結果により,混棲地における淡黄色体毛を持つ個体はメスのウスバシロチョウとオスのヒメウスバシロチョウとの自然交雑体であると結論できる.
- 日本鱗翅学会の論文
- 2001-06-30
著者
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八木 孝司
Research Institute for Advanced Science and Technology, Osaka Prefecture University
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八木 孝司
Research Institute For Advanced Science And Technology Osaka Prefecture University
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尾本 惠一
International Research Center for Japanese Studies
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